工業地帯でもある神奈川県・川崎市。同市の市立稲田小学校の屋上で“事件”が起きたのは5月17日のことだった。
川崎市教育委員会の担当者に“事件”の実態を聞いた。
「プール開きに向けて、教員が注水作業を行ないました。25年前、小学校改築のタイミングで屋上に備え付けられたこちらのプールは、約6時間ほどで授業に必要な水は貯まる。しかし、教員が水を止め忘れたため、5日後の5月22日まで止水作業が行なわれなかったんです」
当の教員は10年ほどのキャリアを誇る30代半ばの男性。男性教員が流出させてしまった水の量はいかほどだったのか。
「25メートルプール6杯分に当たる21755㎥です。プールで作業予定があった用務員からの指摘で、教員は水が出しっぱなしになっていることに気がつきました」(前同)
プールへと水を注ぐバルブが5日間も開けっ放しになっていた背景には、どのような理由があるのだろう。
「注水スイッチを押すのと同時に、ろ過装置も作動させたため職員室内で警報音が鳴りました。警報音を止めようと職員室の電気ブレーカーを落としたところ、注水スイッチの電源も連動する形で切れる羽目に。
しかし、教員は注水スイッチの電源が切れたことに気がつかなかったのです。結果的に、注水スイッチを止めたと思い込み、プールへと水を注ぐバルブの蓋が閉まっていないという事態に……。プールの操作マニュアルは校内ですでに紛失されており、その影響もあったのかもしれません」(同)
慌てた学校は止水作業を行なった翌日に、市教育委員会へとミスを報告。しかし、後日、市側が下したのは非情な決断だった。
「流出してしまった水の水道代は約190万円分。その半額である95万円分を当該教員及び、監督責任者である校長に賠償請求することにしました。地方自治法や国家賠償法に照らし合わせた判断です」(前出の市教育委員会の担当者)
だが、この少々厳しすぎると感じられる決定に市民も反発。8月10日に教員への賠償請求が発表されるや、「このままでは教員の担い手がいなくなる」として、市の決断に反対する意見が100件近く寄せられたのだ。