■尾木ママが「素晴らしい」と絶賛する理由
この取り組みを「素晴らしい」と評価するのは尾木ママこと、教育評論家の尾木直樹氏だ。
尾木ママは本サイトの取材にこう答えてくれた。
「実は僕、港区にある都立中央図書館の名誉館長を務めていて、近くには、ドイツ大使館があるのですが、港区には日本にある約150か国の大使館のうち半数以上があり、外国人の方が本当に多い。
その影響もあってかコンビニの商品棚まで外国人向けの英語表記。近くには、進学校で知られる麻布中・高もありますし国際色が本当に豊か。シンガポールへの修学旅行もある意味必然なのかなと思います」
それでも、ニュースを聞いた当初は尾木ママの頭にも経費の問題がよぎったという。
「従来どおり奈良・京都へ行くのと、シンガポールへの修学旅行では保護者負担額が大幅に変わるのであればもちろん反対でした。しかし今回、不足分は区が補う。感受性の高い中学生が、異文化に触れて吸収するのはすごく価値がある」
港区がこの取り組みを行なった背景には別の理由もあるのでは、と尾木ママは指摘する。
「都内は中学受験をする子の割合が非常に高い。港区も小学生の4割強が私立中学へと進学します。公立中学校への進学者を増やしたいという自治体サイドの狙いもあるのでは?」
なぜ、公立中学校への進学者を自治体は増やしたいのか。尾木ママはキーワードに多様性を上げる。
「様々な家庭環境にいる子が集まるのが公立小学校・中学校の良いところです。リーダーとして活躍する人材は多様な価値観を尊重できないといけない。
幼少期から一定の経済力がある家庭の子が集まる私学に進学した子だけが、国や企業、社会のトップに就くという流れには賛同できません。そのためにも公立中学校には庶民の味方として、多様な価値観に揉まれたリーダーを育てて貰いたい」
一方で、この取り組みを全国的に広げる必要はないとも尾木ママは語る。
「外国の方も多く住む港区という特別な土地柄、海外研修が必要というだけで、他の自治体が無理に真似る必要はないと思います」
区立中学校に通う学生は港区の決定を知らされ、「修学旅行で海外に行けるんだ」と目を輝かせたという。日本の将来を担う人材のための取り組み。どのような結果を市民生活にもたらすか。