街頭の一般人が一般人を犯罪者と決めつけ、詰め寄ったり拘束したりする動画がYouTubeやX(ツイッター)上へと頻繁に投稿されているのはご存じだろうか。これらの動画は投稿者によれば「私人逮捕」と称される行為であり、盗撮行為や転売などを行なっていたと見られる者に対して制裁を加えているのだという。

 この耳慣れない「私人逮捕」という言葉。そもそもの定義づけはどのようなものなのだろうか。

 全国紙社会部記者が解説する。

「通常、容疑者を拘束できるのは警察官のような捜査機関に所属する者に限られます。しかし、現行犯に関してはその限りではない。民間人でも逮捕できる。これが“常人逮捕”“私人逮捕”と呼ばれるものです。刑事訴訟法にも定められていますが、現行犯逮捕した場合はすみやかに検察官や警察官に引き渡す必要があります」

 現行犯を捕らえ、捜査機関の職員へと引き渡すのであれば、法律上の問題はない。東京地検特捜部で副部長も務めた若狭勝弁護士は「私人逮捕は決して珍しいことではない」と明かす。

「テレビ報道などで、警察が現場に到着する前に、強盗犯や痴漢などを一般の方々が取り押さえている映像にご記憶はないでしょうか。あれがまさに私人逮捕に該当するケースです」

 一方で、私人逮捕にはさまざまなハードルがあるとも若狭氏は指摘する。

「明白に現行犯でないと行使するのが難しい。なぜなら刑事訴訟法には、逮捕・監禁罪という規定がある。これは不法に人を逮捕、監禁した場合、3月以上7年以下の懲役に処される可能性が出てくるというもの。誤認逮捕を犯した場合、自身が逮捕・監禁罪に問われるリスクがあるというわけです」