■SNSへの投稿は問題なし!? 専門家の見解

 私人逮捕の典型例として、現在X(ツイッター)上で話題を呼んでいる一本の動画がある。動画の概要を前出の全国紙社会部記者が明かす。

「人気ジャニーズグループのチケットを不当に高値で転売していたとされる女性を、男性ら複数名が取り囲んで押さえ込もうとした動画です。動画内では男性らから逃げようとタクシーへと乗り込む女性に“犯罪者は降りろ”と叫びながら腕や服をつかみ、車から引きずり下ろす様子も映し出されています。

 この過激さが話題を呼んだのか、9月25日時点で動画の表示回数は3200万回超え。いろいろな意見が飛び交う炎上騒動に発展しています」

 投稿内容へのリプライ欄をのぞいてみると、

《売る方も買う方もダメだけど ちょいやりすぎ感も…》
《これは酷くないか?》
《ナイスプレー どんどん捕まえましょう》

 など、さまざまなコメントが寄せられている。

 このXで流れる動画の行為を、前出の若狭氏はどの様に捉えているのか。

「定価を超えるチケットを女性が転売していたなら、それは違法行為です。そのような事実が目認できているのであれば私人逮捕も可能でしょう。また、現行犯逮捕した容疑者を捜査機関へと引き渡した後に、逮捕時の動画をSNSなどへと投稿することもテレビ報道の映像と基本的には同じです。そのため問題はないかと思います。

 ですが、このような市民警察的な活動は危険と隣り合わせ。勘違いや行き過ぎたケースは暴行罪や監禁罪、名誉棄損などに問われる可能性もある。非常にリスキーな行為だということを忘れないでほしいです」

 明らかに犯罪を犯している人を取り締まるのは評価されることだろうが、気がついたら自身がお縄となっていたなんてことがないようご用心を。

若狭勝
1983年検事に任官される。東京地検特捜部副部長、東京高検検事、横浜地検刑事部長、東京地検公安部長などを歴任したが、2009年退官。その後、弁護士に転身し、テレビの報道番組などでコメンテーターとして活躍。14年の衆議院選挙では自民党から出馬し、見事当選を果たす。17年、自民党を離党。希望の党を結成したが、のちに政界を引退する。現在は弁護法人わかさの代表弁護士を務めている。