■賃金未払いに見舞われることも! 海外出稼ぎの落とし穴

 海外で働くことには落とし穴もあると、千葉教授は指摘する。

「日本にいた時は年収300万円ほどで働いていた寿司職人の方が、海外に出て1000万円を超す収入を稼ぎ出すというケースが話題になっています。これはあくまでもスキルがあり、かつ現地では過当競争にない分野へと参入したレアパターン。

 スキルもない語学力もないでは買い叩かれることも珍しくありません。たとえば、店番をしていたけれどもお客さんが1人も来なかったから、“今日のお給料はなしです”と真顔で告げられ、賃金未払いトラブルに見舞われたなんて話も聞きます。

 ここにいれば定期的な収入がある。会社に行けばお金がもらえるというような他力思考ではなかなか厳しい面があるというのが海外で働くリアルではないでしょうか」

 今後、海外で働く若者は増え続けるのか。

「国内ではレッドオーシャンと化している分野でも、国外では需要が伸びている市場はあります。また、和食職人として働くのなら、まだ和食文化が根付いていない“空白地域”へと出向くのも一つの手です。“内向き志向”にならない気骨ある若者が今後、海外へと飛び立つケースは続くのではないでしょうか」(前同)

 人生100年時代。あなたも海を越える日がやってくるかもしれない。

千葉 千枝子(ちば・ちえこ)
淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長 教授
中央大学卒業後、富士銀行、シテイバンク勤務を経てJTBに入社。1996年有限会社千葉千枝子事務所を設立、運輸・観光全般に関する執筆・講演、TV・ラジオ出演などジャーナリスト活動に従事する。東京都・岩手県など自治体の観光審議委員、NPO法人交流・暮らしネット理事長、中央大学の兼任講師などを務める。近著に「レジャー・リゾートビジネスの基礎知識と将来展望」(第一法規)。