日本最高峰として、その優雅な風貌が人々の心を惹きつけて離さない富士山。外国人観光客の間でも、「ゲイシャ」や「ニンジャ」と並んで圧倒的な知名度を誇っている。そんな富士山の頂上へと続く4つの登山ルートに、バリケードが張り巡らされたのは9月10日のことである。
地元住民が語る。
「7月1日から9月10日までが富士山の登山シーズンになります。登山口にバリケードが設置された閉山後も、山に入ることも可能です。しかし、登山者は”富士登山における安全確保のためのガイドライン”でも定められているように、充分な技術や知識を有しており準備をした人のみに限られる。
現に閉山後の9月12日には、1人で富士山を登っていた46歳の男性が、足を痛め自力で登れなくなったとして救助を要請。警察官7人体制で捜索をし、3時間後に病院へと運ばれました。
9月23日には頂上で閉山後初となる氷点下も記録しています。閉山後の富士山はすでに冬山。なのに近年では、富士山の過酷さを知らずにゲートをくぐり抜ける登山客が増加しているんです。一度“危ないですよ”と登山客を注意したら、“自己責任だから”と言っていましたが……。
地元では大惨事につながる、と心配する声も上がっていますね」
2013年には世界文化遺産にも登録された富士山。山梨県の担当職員に話を聞くと、
「5合目にある総合管理センターに、シーズン中は県の職員が常駐しています。主な業務は観光客の方の案内と急病者への対応、怪我人が出た場合の救急車への連絡などです。ボランティアの方と協力してゴミ拾いなどを行なうこともありますが、あくまでシーズン中のみです」
とのこと。
つまりは、十分な準備をしていない状態での富士山へのオフシーズンの入山は、一刻を争う事態になったとしても、緊急援助を即座に受けることも難しいというわけだ。それでも頂上へと続く道のりを、閉山後も歩む登山客が後を絶たないのはなぜなのか。
「外国人観光客の増加です。ツアー客の方が増えていることもあり、富士山を訪れる観光客は増加傾向にあります」(前同)