■円安が収まれば世界同時不況の危険も

 年間の消費税による税収額はおよそ23兆円。15兆円あれば、理論上1年間は消費税を現在の半分に抑えることも可能というわけだ。円安の影響で上がった物価には、消費税を下げることで対応することもできるため、市民生活への負担も軽減できる。ただし、現在が円安のピークなのではと森永氏は見る。

「アメリカの長期金利は現在、4.8%台と高すぎる。この高金利で経済が回るはずがありません。経済の失速とともに、来年は金利が下がっていくでしょう。すると、日米金利差が縮小しますから、円安は解消に向かいます」

 アメリカと並び日本の経済パートナーとなっている中国でも、若年層の失業率の高さからデフレを指摘する声もある。

「アメリカ、中国といった貿易相手国の経済状況が悪化すれば日本経済へのダメージは計り知れません。来年以降、世界同時不況に陥る可能性が高いと私は見ています」(前同)

 円安が進んだ影響で物価上昇に歯止めが掛からず、家計は火の車といった状況だ。しかし今後、日本経済を待ち受けるのは、更なる落とし穴なのかもしれない。
 

森永卓郎
1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)が話題となった。テレビやラジオ、雑誌などでも活躍中。