■メーカーが商品を消費者へとダイレクトに届ける時代に
この価格制度は、どのような影響を消費者へと及ぼすのか。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)など、多くのメディアでも活躍する経済評論家の萩原博子氏が解説する。
「現在、消費者はネット通販などで商品を購入するのが常識です。“指定価格制度”が導入されることで、消費者はどこで商品を購入しようが同じ価格となる。自社サイトで購入してもらえば、メーカーは量販店に中抜きもされませんし、利益も上げやすくなります。結果的に消費者へとダイレクトに商品を届けるという新しい販路の拡大にもつながるのでは」
メーカーによる消費者の囲い込みも進むのではと、萩原氏は指摘する。
「日立の商品をダイレクトに購入した人は、日立商品を購入する際に使えるポイントが還元されるなどの施策をメーカー側は講じるのではないでしょうか。商品ラインナップが充実している総合家電メーカーだからこそできることです」
また、スマートフォンの普及も家電メーカーが消費者を囲い込みやすくなった理由では、と萩原氏は続ける。
「スマート家電という形でスマホと家電をつなげて遠隔操作を行なうのが日常となりました。消費者からすると同じメーカーで自宅の家電を統一した方が、操作をしやすいというメリットもあります。時代の変化にメーカーの価格設定もあわせてきたという印象です」
自社の商品会員となる消費者が増えれば、D Mなどの手法でメーカー側は新商品の宣伝も行ないやすくなる。
「指定価格制度の導入によって消費者は今後、どこで商品を購入しても同じ価格で購入できます。価格決定の主導権を握っていた量販店側からすると、指定価格制度が導入されることで、店舗で商品を購入してもらう魅力が薄れる。今後、量販店の存在意義がどんどん下がるのでは」(前同)
消費者は価格制度の改定によって、さまざまな選択肢の中から自分にとって一番良いと思う商品を購入できるというわけだが、果たしてどんな社会変化が起こるだろうか――。
萩原博子
経済評論家。長野県出身。明治大学文学部卒業。
テレビやネット番組のコメンテーター、解説者、パネリストとしても活動している。『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)や『朝まで生テレビ!』(同局)などの討論系バラエティにも、積極的に出演している。