コロナ禍での生活から、人々がようやく抜け出しつつある2023年。これまで自粛を余儀なくされてきた対面型のイベントも復活している。コンサートや舞台といったイベント、個人での披露宴や歓送迎会なども開催されているのだが、そうした場に付き物なのが「花」。実はこの「花」、業界内では以前から“フラワーロス”問題が指摘されてきたという。

 フラワーロスとは、規格外や不揃いのため市場に出回らなかったり、イベント会場で短期間の飾りとしての役目を終えた等の理由から、まだ枯れていない花が処分されてしまうという社会課題だ。

 一般社団法人フラワーライフ振興協議会によれば、小売店で仕入れた花の30~40%が廃棄されており、その経済損失は年間1500億円にものぼっているという。また農林水産省のデータでは、2021年の切り花国内出荷量は32.5億本、輸入量は12.3億本とある。その内3割が棄てられているとすれば、国内だけで年間10数億本もの花が廃棄処分されていることになる。

 課題意識が高まるなか、さまざまな業界で廃棄花の活用方法が模索されている。たとえば作業服や学生服のデザインから販売を手掛けるオンワードコーポレートデザインは22年、廃棄予定の薔薇の花びらを使って染めたハンドタオルを『はなさく生命保険』のノベルティに提案し、採用された。

 ファストフードチェーンのフレッシュネスバーガーも、23年6月に全店でテーブル上に一輪挿しを導入。1か月で約8000本もの廃棄花を再利用する取り組みを開始している。

※画像はフレッシュネスバーガーの公式X(ツイッター)『@Freshness_1992』より 

 そうしたなか、廃棄花に商品価値を見出したのは、廃棄品に付加価値を加えた形で新商品として世に送り出すクリエーター集団「LOSS IS MORE」だ。

「LOSS IS MORE」は未活用素材を利用し、蒸留酒の製造を手掛けるベンチャー企業エシカル・スピリッツとタッグ。岩手県内にある生花店が廃棄するカーネーションやバラ、ユリを使用して製造した華やかな香りのジンを「花の日」にあたる23年8月7日に発売した。すると、2か月で初回ロット500本のうち300本強が売れる好評ぶりとなっているという。