■AIタレントが「CMタレントの座を奪う」可能性は?

 AIタレントを起用するCM制作には、どういった意義があるのか。博報堂で、日産自動車などのキャンペーンを手掛けた後に独立。現在は広告やマーケティングを手がける『The Breakthrough Company GO』の代表でPR・クリエイティブディレクターの三浦崇宏氏に話を聞いた。

「まずCM制作で大事なことは2つあって、”表現の新しさ”と”構造の新しさ”。”表現の新しさ”は、タレントさんがこんなユニークなことをやっているとか、すごいCG表現とか。その意味で、AIは今や表現としては“普通”の話。今回話題になっているのは、CM制作の構造としてAIが新しいからですよね」

 AIはさまざまな分野での活用が注目されているが、CMを作る際の材料にAIで生成されたキャラクターが起用されたのは日本で初めてだ。では、今後CMにおいてAIタレントが地上波でも活躍するタレントの座を奪うという可能性はあるのか。

「タレントさんって、やっぱりみんなが知っていること、みんながその人のイメージを共有していることが重要で魅力なんですよね。たとえば橋本環奈さん(24)だったら天真爛漫とか、大谷翔平さん(29)だったら”日本を代表している”、”世界に通用する”だとか。

 タレントさんにはその人、個人の人格や活躍などといった“背景”がありますが、AIにはありません。そしてCMはそのタレントさんの文脈と知名度を買っているのであって、文脈と知名度がないAIタレントなら、ノンタレ(有名タレントではない人)と変わらない扱いになるかなと。

 ただしそうなってくると、今度はAIタレントを生成するコストが宣伝効果に対して“見合う”のかという問題は出てきます」(前同)