さまざまな国や地域に生息する生き物が一堂に会する動物園。そんな中、東京・多摩動物公園で暮らしていたタスマニアデビルの「テイマー」が亡くなったのは10月16日のことである。異国の地で7歳にして迎えた最期の時――。

 オーストラリアのタスマニア島では、絶滅危惧種に指定されているタスマニアデビルたち。そんな彼らはなぜ、異国の地で暮らすことになったのか。多摩動物公園の担当者に話を聞いた。

「野生で生きているタスマニアデビルに伝染性顔面腫瘍が広がっているのが発覚したのは1996年のこと。それを受けて生息地であるタスマニア州政府が、2003年に『セーブ・ザ・タスマニアデビルプログラム』という企画を立ち上げました。

 その一環で、海外の飼育機関でも、13年5月1日からタスマニアデビルの飼育・展示を行なうことに。そこへの参加を希望した結果、繁殖はできませんが飼育の許可が下りたのです」

 タスマニアデビルのメス2頭が、南半球にある島国から極東の地へと移送されてきたのは16年のこと。その翌17年には、今回亡くなったテイマーを含むオス2頭も来日を果たしたという。

 飼育をする上でポイントはどこだったのだろうか。

「タスマニアは比較的乾燥している地域ですので、日本の様に高温多湿な夏にはなりません。そのため、タスマニアデビルは暑さに弱い。それで、飼育部屋にはエアコンを付けました。

 また、ウチの園では初めて飼った動物ですので、エサにも一苦労。現地では、ワラビーの肉を食べており現地で研修を受けた際には“動物性タンパク質ならなんでも食べるよ”と説明されていた。しかし、飼ってみると牛肉や馬肉といった一般的なエサはほとんど受け付けませんでした」(前同)

 タスマニアデビルたちの食欲不振を受けて飼育担当者は園側に、普段扱わないエサも購入するよう要請。うずらやうずらのヒヨコも飼育のためにエサとして与えるようになった。

「テイマーたちは、ドッグフードや猫の餌である『ちゃおちゅ〜る』のささみ味もおやつとして好んで食べていました。食事量はかなり多いですよ。自然環境に生息するタスマニアデビルは、1回に体重の40%、3キロ以上は食べられるとも言われています」(同)