■弱いオスがイジメられて……色恋沙汰も発生

 タスマニアデビルの大きさは全長60センチほど。体重はおよそ8キロと、柴犬とさして変わらない。

「飼育環境下で暮らしているのも影響してか、テイマーが食べる量はせいぜい多くて1回に2キロほどでした。餌やりは1週間に4回。曜日を固定せずにわざとランダムにエサを与えることで自然環境に近づけていましたね」(前出の担当者)

 多摩動物公園にオスとメスが揃ったことで“色恋沙汰”も発生する。

「繁殖期以外は同じ部屋で育てていたんです。他のデビルがいるだけで、元々住んでいたメスのデビルの刺激にもなる。ただ、デビルのメスは力が強いオスを好む習性がありまして……。

 あとから園に来たデビルの内、弱いオスのデビルにあたる『ダーウェント』がメスの『メイディーナ』にイジメられてしまったんです。それ以来、『メイディーナ』と『ダーウェント』が一緒に過ごす時は、強いオスである『テイマー』は同じ空間に入れないなど気をつかうようになりました」(前同)

 17年と19年にはメスの『マルジューナ』と『メイディーナ』がそれぞれ、悪性腫瘍で死亡。23年1月にはテイマーの兄弟にあたる『ダーウェント』が亡くなった。そして今回、テイマーが亡くなったことで、多摩動物公園にタスマニアデビルはいなくなってしまったわけだが今後、新たなデビルをお披露目する可能性はあるのだろうか。

「『セーブ・ザ・タスマニアデビルプログラム』には参加していますので今後、新たなデビルがオーストラリアから送られてくることもあると思いますよ。ただ、時期まではまだ全然決まっていません」(同)

 ボルネオオラウータンやニホンコウノトリ、トキといった絶滅危惧種も多数飼育する多摩動物公園。絶滅危惧種を飼育する意義をどう考えているのか。

「絶滅危惧種の飼育をすることで、動物が危機を迎えている現状をお伝えできればとは思っています。日本の飼育環境は他国に比べて広いとは言えません。限られた空間で動物にストレスを与えずに飼育を行なうのは非常に大変。

 絶滅危惧種であれば、繁殖を行なう必要もある。ただ、繁殖をして個体数が増えたは良いけど、スペースがなければ動物が疲弊してしまいます。そのバランスを取るのはすごく難しいですね」(同)

 さまざまな動物を飼育する裏では、数多の苦労が存在するのだ。