コロナ規制も明けた2023年の日本。右肩下がりを続けていた海外からの訪問客数の下落も止まり、旅行産業にも回復の兆しが見えている。そんな中、各地で問題となっているのが、観光客の増加による騒音やごみのポイ捨てなどが地域住民の生活に悪影響を与えている「オーバーツーリズム」問題だ。

 その影響を最も受けているのは、世界的な観光地の古都・京都。10月22日に開催された鞍馬の火祭りでも、オーバーツーリズム問題の一端は垣間見えたという。

 その様子を元京都市議で、現在は大正大学客員教授を務める村山祥栄氏が話す。

「秋の夜空を無数の松明が赤く染めることから、人気がある鞍馬の火祭り。しかし、山門の前には外国人の方を中心に多くの人が集まり、松明が動けないというような混み具合になってしまいました」

 鞍馬祭りを訪れる観光客は細長い山門の前を通る松明を、定められたルートを歩いて眺めるようにルール付けられている。これは目の前を通る松明を見ようと人が殺到し、ドミノ倒しのような事故が起こるのを防ぐためだ。

※画像は鞍馬寺『@Kurama_dera』の公式X(ツイッター)より

「当日、警護にあたった警察の方やボランティアスタッフの数は100人以上。その方たちが“立ち止まらないで下さい”と、声を張り上げて注意をしようが、観光客はお構いなし。

 インスタ映えを狙ってかスマートフォンで必死に写真を撮る人も跡を絶ちません。今年は警察も警護車両を7〜8台出動させていましたが、このままではいつ事故が起きてもおかしくない」(前同)

 世界の人が憧れる観光都市・京都で起きているオーバーツーリズム問題はなにも、鞍馬祭りに限らない。市民の足ともなっている公共交通機関の利用を巡る問題も顕在化している。

「金閣寺の前で多い時には、100人近くが市営バスを待っている。これでは市民がちょっと買い物に行こうと考えてもなかなか、出て行けません」(同)

 大阪富田林市を中心に、市民の足となる路線バスを運行させてきた大阪の金剛バスが、人材不足を理由に路線廃止となるのは12月20日のこと。バス運転手不足は日本中で発生している問題のため、京都市でも観光用シャトルバスの増設などの対策に打って出るわけにはいかないのが実情だという。