■コロナ禍に突入して「海外留学」に大きな変化が
未来の日本を背負う学生たちが、海外留学の夢や目標を諦めなくてはいけない状況に、千葉商科大学准教授・常見陽平氏は、「サポートが必要」と警鐘を鳴らす。
「コロナ禍の影響で、家計に打撃があった家も多い。経済的に厳しくなり、学費がやっとという家も増えるなかで、留学は学費だけでなく海外での生活費が重たくのしかかります。ただ、じゃあみんな行かなくなっているかというと、行く人は行く。どうしても留学したい! という意欲が高い人はなんとかやりくりして行くんですよね。
というのもコロナ禍前まで、留学は短期が中心になっていました。手軽に海外体験をしたい、卒業時期を遅らせたくない、就活と両立できるなどの理由です。大学も短期型の提携プログラムを増やしました。
ただしコロナ禍や円安、不安定な世界状況など、留学に対して躊躇する要素が続く中で、留学に対するライト層が減りました。語学を習得したい、フィールドワークの経験を積みたいといった“ガチ勢”は結局、半年、1年と留学するんです」
日本学生支援機構が調査した「日本人の海外留学者数」を参照すると、確かに18年までは「3か月未満」の短期組が留学者数の伸びを牽引している。
全体の留学者数は、09年の3万6302人から19年には10万7346人と10年間で約3倍。また3か月未満の短期留学者数は09年が2万1683人で全体の約6割だったところ、19年には8万1671人と全体の8割近くを占めるまでになっていた。
そのうえで21年のデータを見ると、全体の留学者数1万999人のうち3か月未満は1142人と1割ほどに過ぎない。一方で3か月以上6か月未満は3395人、6か月以上1年未満は5053人、1年以上も1208人と長期留学組が復調傾向だ。
「若い頃の体験って一生モノだと思うんですよね。特に同じ海外でも、学生時代に留学で行くからこそ意義が大きい。日本で生活する外国人も増え、どんどんグローバルになるなかで、あえてアウェイな環境に身を置くと、見える世界が全然違うことに気づくでしょう。
そして日本経済が停滞している今だからこそ、外から日本を見るという経験は今後、貴重になる。そのためには、公的な機関や企業などによる何らかの支援のさらなる充実も必要だと思います」(前同)
若者支援こそが未来の日本を救うための課題。国際競争力を身に着けようというのなら、官民ともに外の世界を見てみたいと願う学生へと向けて充実した支援を取り組む必要があるというわけだ。選挙目当てのばらまき政策にご執心、とも言われてしまっている岸田文雄総理の耳に届くだろうか――。
常見陽平
リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年より千葉商科大学国際教養学部専任講師。2020年より准教授。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。