少子化による高齢化、人口減、そして円安……「日本は斜陽国」とも称されるようになってしまった昨今。そんななか、学生年代で俄然注目を集めるのは「海外留学」だ。
多様な文化的背景に触れることが、魅力の一つでもある学生生活。今や多様性やボーダレスという価値観が重要視されるようになり、かつてと比べ海外留学へと飛び立つ学生が多くなっていた。
日本の未来を担う若者が海外へと羽ばたけば、ゆくゆくは、新たな知識や最先端の技術、またさまざまな考えや物の見方が日本社会へ還元されうるというもの。日本社会の未来は明るい――と思いきや、どうやらそうではないらしい。海外留学に積極的と目される外国語学部志願者の減少が、今、止まらないというのだ。
日本私立学校振興・共済事業団「私立大学・短期大学等 入学志願動向」によれば、私立大学の外国語学部志願者数は、コロナ前の2019年度が9万5158人。その後21年度には7万3790人、さらに22年度は5万9645人にまで減少。なお21年から22年の減少幅は1万4145人で、ワースト1位。全学部中で唯一の1万超え減少となった。
そして23年度は5万7251人と、19年度から約4割減という数字にまで落ち込む。この原因の一つにあげられるのが、円安による留学費の高騰だ。10月20日には1ドル=150円台にまで値下がりしている。これは1990年8月以来32年ぶりのことである。
大手予備校関係者が語る。
「外国語学部を目指す学生には留学を志望するケースも珍しくない。日本学生支援機構のデータによれば、人気の留学先は欧米で全体の7割を超えています。その欧米を中心に留学費用は高騰しているのが実情です」
ウクライナ危機の影響によるエネルギー価格の上昇で渡航費が右肩上がりのところへ、円安が学生生活を直撃しているというわけだ。
「欧米の場合、留学費用は1年間で約300万円~400万円とも言われている。それに、現地での生活費が加わるわけで、留学費用はここ1年~2年で1.5倍ほどに跳ね上がった。現在1ドル=150円(10月27日10時現在)。円の値下がりは止まりそうになく、”留学離れ”には歯止めがかかりそうにない」(前同)
文部科学省「学生の海外留学に関する調査2022」を元に内閣官房教育未来創造会議が作成したデータを見てみると、興味・憧れはあるが、海外留学していない理由として、「経済的な余裕がないから(渡航費・休学費用含む)」とした人が「強くあてはまる」(33.2%)、「まあまああてはまる」(26.5%)で約6割。「どちらかというとあてはまる」(20.0%)まで入れると79.7%と、約8割にものぼるのだ。