■スマホで視聴できる身近さと「非日常」のバランス

 前述の「オオカミ」シリーズについて、鎮目氏は「革命だった」と評価する。

「単に恋愛のなりゆきを観察するだけでなく、そこに推理が入ってくる。いろんな人がさまざまな仮説を立てることで見方の幅が広がるし、SNSでも盛り上がる。そしてキャスティングを変えるだけで全く異なる展開が待ち受けるので、常に新鮮な気持ちで見ることができる。恋愛リアリティ番組において、このフォーマットは発明だと思います」

 またABEMAの恋愛リアリティ番組では、出演者は美男美女揃いながら、共感性の高い“リアル”を大事にしている印象がある。たとえば、現在人気の『GIRL or LADY ~私が最強~』のテーマは、「年齢と共に変化する女性の魅力や恋愛観・結婚観のリアル」。女性たちが持つ各年代ならではの魅力と、相手チームから盗んだ恋愛テクニックなどをすべて駆使して運命の恋をつかむさまを追いかける。

「20代VS30代ということで幅広い層に刺さる内容になっていて、しかもチーム戦。これも仕掛けが上手いなあと思います。一捻りを入れることで、ワクワクできる新しさを上手く作っていますよね」(前出の鎮目氏)

 恋愛ドラマは、脚本を元に俳優たちが演じる“完全な作り物”だが、スマホで見るABEMAの恋愛リアリティ番組は絶妙な身近さと非日常がないまぜになり、《めっちゃキュンキュンする》《切ない》など、放送中も番組コメント欄は活発だ。

 鎮目氏は、そんな恋愛リアリティ番組の魅力を「リアリティ=ノンフィクションとフィクションの間を行ったり来たりできること」と分析。単なるドキュメンタリーにとどまらない新・恋愛リアリティ番組の可能性は、まだまだ広がりそうだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)