■パトカーに「FRセダン」が多い理由

 では、FR(フロントエンジン・リアドライブ)の利点は何か。

「FRだとアクセルを踏んで駆動するのは後輪で、ハンドルを切って曲げるのは前輪ということになる。つまり駆動とハンドル操舵が独立しているので、カーブを曲がるコーナリング性能が優れ、ドライバーが車を操りやすいんですね。車としての運動性能が良い。

 FFだと、曲がる方向と前に進む駆動を同じタイヤが受け持たなくちゃいけないので、タイヤがキャパオーバーするというか、曲がりにくかったりしたものなんです。だから高速警ら隊のように、速く走って違反者を捕まえたり早く事故現場に行かなきゃいけないような、緊急車両としての機動性という意味では、当時スカイラインが非常に優れていたということですよね」(前出の松田氏)

 高速隊のパトカーがセダンを採用するケースが多い理由はまだある。

「違反した人を捕まえて後部座席に乗せ、違反切符を切らないといけない。そういう時に4ドアのセダンは都合がいいんです。ただし今はセダン自体がトレンドから外れて、どこのメーカーもSUVに注力しているという現状もある。

 警察車両にも今後SUVはありかなと思いますが、車高の高いSUVは重心が高くなり、コーナリングも重たくなる。機動性を重視する高速隊となると、やはりまだまだセダンが強いかなと思います」(前同)

 誕生から66年の「スカイライン」は、高度成長期の日本自動車産業を引っ張った名車中の名車。日産車の中でも「シーマ」「セドリック」など消えてゆくブランドがあるなかで、最も長い期間、愛されている。

 普段なかなか知ることのできない兵庫県警がつづった「どんな違反車両にも追いつけた」ポストには、《技術の日産》という声も寄せられた。懐かしさとともに、あらためて日本自動車産業の技術力の高さに感慨深さを覚えた人は多かったようだ。