第36期竜王戦7番勝負第4局(北海道小樽市「料亭湯宿 銀鱗荘」・11月11日)に勝利し、竜王戦3連覇、「八冠」(王座・竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖)を防衛した藤井聡太八冠(21)。一夜明けた11月12日の記者会見では、学生時代からという鉄道好きの素顔も覗かせた。
藤井八冠は、小樽からどこに行きたいかという記者からの質問に対して「函館本線の“山線”に乗る機会があれば」と回答。「山線」は2030年度末に北海道新幹線、新函館・北斗~札幌開通に伴うタイミングで廃止が決まっているため、言外に“それより前に”という鉄道ファンらしさを見せた。
「山線」とはどういう線か。過去に「山線」乗車経験があり、20代の頃から鉄道を愛する鉄道事情に詳しいライターの金子則男氏が解説する。
「“山線”とは通称で、JR函館本線の長万部(おしゃまんべ)~小樽間のことです。函館と札幌を結ぶルートは、途中の長万部で『小樽を通る函館本線ルート』と『登別や苫小牧を通る室蘭本線・千歳線ルート』に分かれますが、特急はすべて室蘭本線・千歳線経由。そちらは海沿いを通るので“海線”、もう一方は山側を通るので“山線”と呼ばれます」
金子氏いわく、「『函館本線』という立派な名前が付いていますが、今や長万部~小樽間は超ローカル線。特に長万部~倶知安(くっちゃん)間の電車は1日数本」。実際に時刻表を調べてみると、平日・休日とも長万部→倶知安間(下り)は一日4本。逆区間(上り)は5本だ。
「停車駅にはオーストラリアからのスキー観光客が大挙して押し寄せることでも有名な『ニセコ』、ウィスキーで有名な『余市』など、よく知られた観光地がいくつもあります。しかし北海道新幹線の建設計画において、並行在来線である函館本線の長万部~小樽間は廃止されることが決定済み。存続の動きはありましたが、結局、移動手段は高速バスで十分、と切り捨てられたのです」(前同)