■日本で唯一「駅が民宿&ホームでBBQ」というレア体験

「北海道新幹線並行在来線対策協議会(後志ブロック=長万部~小樽間)」による協議の結果とはいえ、鉄道ファンにとっては悲しいお知らせ。乗車経験がある前出の金子氏も「車窓の景色は本当に素晴らしく、ぜひローカル線でゆっくり楽しみたい」と惜しむ。

「起伏の富んだ地形を走る路線からの眺めは、ニセコや羊蹄山など見どころだらけ。途中の比羅夫(ひらふ)という駅は、事務室などを改装し、日本で唯一駅舎が民宿営業をしていることで知られます。夏期は駅のホームでジンギスカンのバーベキューをしているのも名物です」(前同)

 その他、長万部といえば駅弁「かにめし」が有名だが、19年にJR北海道が特急列車での車内販売を終えて以降、駅構内での販売はゼロ。かにめしを堪能しようと思えば駅前の「かにめし本舗かなや」まで行かなくてはならない。

※画像は「かにめし本舗かなや」の公式X(旧ツイッター)『@kanimeshi_No1』より

「仕方ないことですが、合理化すると旅情は消えてゆきますよね。乗ってみないと分かりませんが、北海道新幹線は約8割がトンネルなので、車窓の景色はあまり楽しめないと思いますよ。

 ただ、多くの人が求めているのは旅情よりもスピード。長万部から小樽まで“山線”は3時間以上かかりますが、新幹線なら30分ちょっとなので、時間では勝負になりません」(同)

 現実問題として、多忙な藤井八冠が「山線」に乗るとしたら日帰りでは、自身の地元である愛知まで戻れない。しかし八冠の口から「山線」という単語が飛び出したのは、鉄道ファンのみならず地元民は嬉しかったに違いない。

金子則男(かねこ・のりお)
1973年生まれ、東京都出身。20代の頃からライターとして活動。乗り鉄、ドライブ、散歩、登山など、幅広く“移動”を愛する。『NEWSポストセブン』(小学館)など、ネットニュースで主に執筆。フリーライターとして日々全国を飛び回っている。そのため、ホテル、旅館、民宿などに、500泊以上宿泊している。