千葉県南部を中心に、シカ科の哺乳類「キョン」が大繁殖している――。
環境省が定める日本固有の生態系を損ねたり、農作物に被害を与えるとされる特定外来生物に指定されているキョン。本来中国南東部や台湾に生息する草食獣だが、現在、千葉の南部で大増殖しているのだ。
成獣は体高約50センチ、体重は13キロほどで、ニホンジカ(成獣の体高70~130センチ、体重約30~130キロ)と比べるとかなり小さい。千葉県の南部で増えているキョンは、2001年に閉園した勝浦市のテーマパーク『行川アイランド』から逃げ出したものが野生化したものだとみられている。
「県の推計によると、06年度には約9200頭だったところ、09年度に1万4900頭、19年度には約4万4000頭と10年で3倍に増加。繁殖力が強く生後半年程度で妊娠し、1頭のメスが1頭の子を産みます。
県によれば、同一個体による出産を最大で年に1回と想定した場合、年増加率は36%と推定。22年度は7万頭を超えていることが報じられています」(夕刊紙記者)
キョンの増殖を問題視する県では、生息数の低減化を図ることを当面の目標に、09年3月から21年3月まで「第1次防除実施計画」を実行した。しかし04年度にキョンが確認されたのは5市町だったが、20年度には17市町まで拡大。
捕獲数も00年度の28頭から19年度には5008頭と激増している。分布の拡大に歯止めがかかっていない状況に、県も21年度からはあらためて5か年にわたる「第2次防除実施計画」を策定している。市原市中部から一宮町にかけて「分布拡大防止ライン」を設定するとともに年間8500匹以上の駆除を目安に掲げ、野生化したキョンを完全排除することが最終目標だ。
「もともとキョンは森の周辺で、木の葉やドングリなどを食べて生活しています。しかし、近年では住宅のある地域にも出没。農作物の被害報告も増加傾向で、野菜類や名産品であるイチゴのような果物、稲などを食い荒らしているようです」(前同)