■出るわ出るわ! 悩ましいのは“熊と同じく”……
「分布拡大防止ライン」である一宮町に近接する千葉県茂原市に本社を置きアライグマやトコジラミの害虫駆除業を行なっている想和ホールディングスの早川佳宏代表に、「キョンが生活空間にいる」という日常の実態を聞いた。
「キョンは、もはやそこら中にいますよ。昔はいなかったけど、脱走したのを放置しちゃっったから、繁殖に繁殖を重ねて……。
以前、シロアリの駆除を一軒家で行なっていたら、その家の庭にキョンがいました。キョンを見かけるのは、それぐらい珍しくないということですね。今や道路や山道を車で走っていたら出るわ出るわといった状態で、うっかり轢きそうになるほどです。ぶつかったら車も被害に遭いますし、運転も注意しなくちゃいけない。
家屋に入り込むことはそんなにないけど、雑食性で、農作物はもちろん、花壇の花でもなんでも食い荒らすから始末が悪い。また、住民を悩ませているのはその鳴き声。”ギャーッ”って大きな声で鳴くんです」(前同)
電気柵などの対策を農家から相談されることもあるという早川氏。「キョンの駆除は基本的に猟友会中心なので、自分たちが直接処分するということはない」と言いながらも、懸念事項を口にする。
「熊を殺すなという声が世間を賑わせましたが、キョンも同様にそうした“殺すな”という声があると聞きます。可愛いと思って人間が触れば、ダニなんかがうつる可能性も十分にあります。見つけても絶対に触らないことです」(同)
すでに千葉県北部の柏市でも目撃されているキョン。ジワジワとその生息地域を県内で拡大しているが、近寄らないことが肝要だ。