■アパート全部屋がトコジラミまみれに

 人や物に付着して移動するため、被害は防ぎようがないのが実情だ。

 日本ペストコントロール協会はHP上で、「病院の1室でトコジラミを発見しすぐに駆除したが、1年後には11部屋、2年7か月後には67部屋に広がった」「各種配管、配線、ダクト、天井裏、ドアの下の隙間、壁の隙間などを利用し、あちこちの部屋に広がった」と、部屋をまたいで広がる事例を報告している。

 害虫駆除をおこなう千葉県にある想和ホールディングスの早川佳宏代表も、広範囲にわたるトコジラミの駆除作業も珍しくないと話す。

「最近では、2LDKが10世帯ある2階建てのアパートで、端から端まで全部屋が汚染というケースがありました。

 2階の真ん中がいちばん酷くて、畳から何から、もう血糞だらけです。そこに住んでいたのは若い夫婦で、旦那さんが建設業。あちこちに出張へ行くような人だったので、どこかでもらってきて、一気にまわっちゃったんでしょうね。うちの前にも2社の業者が駆除をしたものの、被害が止まらないということでした」

真っ黒な血糞まみれの畳

 なお、トコジラミの駆除は「数回行なう」のが一般的だ。一度の作業で駆除しきれなかった卵がかえる可能性を考慮し、2回、3回と作業を行なう。作業後に“再発”した場合、無料で再施工する保証期間を設ける業者もある。

 保証期間は業者によって異なるが、早川氏は「駆除料金として“低価格”をうたっているところは、保証期間を設けていても30日間と短いことが多い」と指摘する。

「一度だけの激安価格でいい加減な作業をされ、保証期間も短いとなると、ほぼ2回目を頼まなくてはならない羽目になる。つまり、2回目の作業を見越したビジネスなので、注意が必要です。きちんと相見積もりをとって、低価格のからくりや作業内容、保証期間などを確認したほうがいい」(前出の早川氏)

 実際の駆除においては、業者が薬剤を撒く時やスチーム処理をする間、住人はどこかに数時間避難しなくてはならないというから、一日がかりとなる。

 年末に向けて人の移動がますます多くなるシーズン。もし肌や屋内に少しでも異変を感じたら、できるだけ速やかにトコジラミの仕業かどうかを突き止め、駆除することが大切だ。