■プロの運転手が「電動キックボードには近づかない」ワケ

 直木賞作家・志茂田景樹さんの次男で、現役タクシードライバーの下田大気氏も、「電動キックボードには絶対に近づかない」と言う。

「たとえば終電後、経費でタクシーに乗って帰宅できるような人は電動キックボードには乗りません。ただ若い人のなかには電動キックボードで帰る人もいる、という話は仲間内でも出ます。私の経験で言えば、歌舞伎町のホストさんが使っているのをよく見かけますね。

 日中で使っているのも、若い人や会社員の近距離移動が多い印象です。ただやっぱり、同じ車道にいる身からするとヒヤヒヤはします」

 下田氏は、「電動キックボードは、乗っている時のバランスの取り方に注意が必要」だと指摘する。

「スマホを見ながらとか、大きな荷物を手に持ったりハンドルに掛けて運転している人も結構いるのですが、いつバランスを崩すかと怖い。電動キックボードに乗っている人が車道で倒れると、車がひいてしまう可能性もゼロではありませんから」(前同)

 電動キックボードは車輪が小さいうえ、立ったまま走行する。そのため、急なハンドルやブレーキ操作でバランスを崩しやすいのだ。

「安定感がないので、ちょっとした段差でもバランスを崩しやすい。また濡れた路面では滑りやすいですし、下り坂でのブレーキ操作で効きが悪かったりすると、車のほうに突っ込んでくる可能性もある。特に小柄な女性が乗っている場合はバランスを崩す可能性も高くなります。

 こちらもそういったことを予見しながら走るのですが、危ないなと思うものを見かけたら、極力近づかないようにしますね」(同)

“我が物顔”で車道を走る電動キックボードに、悩まされることもあるという。

「電動キックボードで車と並んで車道を走っていたり、交差点を曲がる際などに、タクシーにぶつかってくるケースがあります。もちろん単純にすべったり操作ミスをしたのかもしれませんが、当たったらラッキーで、カネをとってやろうという意識の人がいるのも事実です。

“当たり屋”まで故意かどうかはわかりませんが、タクシーの方がどけ、みたいな態度の人は珍しくありません。タクシードライバーは絶対に事故を起こせない“弱い”立場。電動キックボードに乗る人はルールやマナーを徹底してほしいと切に思いますね」(同)

 年末にかけて、電動キックボード事故が多発しなければいいのだが……。

下田大気(しもだ・ひろき)
直木賞作家である志茂田景樹の次男として生まれました。
俳優、会社員、飲食店経営などを経て2009年にタクシードライバーとなる。1ヶ月で300人中トップの売上を達成し、年収800万円を稼ぎ出す「カリスマタクシードライバー」として成功し、その豊富な乗務経験をいかしてタクシーコンサルティング事業、作家業を営むかたわら、ワイドショーのコメンテーターなどメディアでも活躍しています。2015年武蔵野市議会議員選挙に出馬し初当選。現在もタクシードライバーとして乗務し、その経験を活かした街づくり、道路整備にも力を入れています。