■人間が入れない危険地帯もなんのその
労働力不足を解消すべく、空港の警備にも乗り出したロボット犬。AI搭載ロボットには何ができるのか。今回のプロジェクトにも参加している東北エンタープライズの担当者が答える。
「Spotは米国企業により、2017年に開発された製品です。背中にカメラを乗せて四足歩行で動き回り、遠隔操作ができる。災害現場やがれきの中で、万が一、倒れても自力で起き上がれます。22年には福島第一原発の内部を映像調査すべく、Spotが使用されています。悪路や雨天でも走行できるSpotは、空港などで長時間の巡回警備にも耐えられるのです」
人間が活動することが難しい地域での活躍が期待されるSpot。では、搭載されたAI機能はどのような場面で活用されるのか。この技術が最も活きるのは、巡回警備を行う場面でのことだと、Spotのソフトウエア開発を担う、日本IBMの担当者が話す。
「Spotの背中に乗せたカメラのAI顔認証システムを使って、制限エリア内で不審者を発見します。たとえば空港ですと旅客機に限らず、ふだんは搭乗客の目に触れない貨物輸送専用機などの珍しい機体が離着陸を行うこともあります。この種の珍しい機体が飛行場で離着陸着を行うと、ファンの方が入場規制エリアの柵を飛び越えて制限エリア内へと入場することなどが、たびたびあるんです。
通常、制限エリアへは空港内で働く人や清掃員の人しか入れません。SpotのAI機能を使えば、制限エリア内への入場を許可されていない人を外見や制服から判断できます。Spotがカメラを向けた相手を不審者だと認識すると“不審者です”と人間の声で警報音を発します。機械ですので、360度見渡せるうえに、いつ何時でも警備作業を行えるというわけです」(前同)
人間と機械が共存する未来は、すぐそこまで来ているのかもしれない。