■恵方巻の海苔も「危ない」
節分では、豆まきとともに縁起のよい食べ物として『恵方巻』も定番だ。現在はさまざまな形でアレンジされているが、恵方巻とは本来七福神にあやかった7種類の具材を巻いた太巻きのこと。その年の“恵方”(24年は東北東)を向き、無言で太巻きを一本丸かぶりするのが伝統的だとされている。
言葉を発せず、太巻きを切り分けない状態で食べるのは、恵方巻に巻き込んだ福が逃げないようにするためだ。しかし、恵方巻についても前出の久住医師はこう警鐘を鳴らす。
「太いものを丸ごと食べると当然、喉に詰まりやすくなりますよ、という話なんです。また恵方巻の表面を覆う海苔は食物繊維が豊富です。わかめやキノコが代表的ですが、食物繊維が豊富な食材は一般的に噛みにくい。加えて恵方巻の海苔はしっとりしているので、なおさら噛み切りにくいのです。
昔の人は、辛いことをくぐり抜けるとご利益や良いことがあると考えがちな側面がありますが、健康面のことを考えれば、恵方巻は小さく切って食べたほうが絶対にいい。医師としては、伝統より健康を考えて食べてくださいとお願いしたい」
幸せを呼び込む行事のはずが、救急車を呼ぶような緊急事態は招きたくないもの。豆まきや恵方巻を食べる際には十分気をつけたい。
久住英二
内科医・血液専門医。
1999年新潟大学医学部卒業。虎の門病院で内科研修の後、血液科医員に。2008年ナビタスクリニック立川を開業し、現在に至る。血液内科医であり、さまざまな感染症の臨床経験が豊富。日々の外来診療で鍛えられた「分かりやすく解説する力」を活かして様々なメディアで執筆や解説をおこなっている。