■番組サイドが恋愛リアリティーショーを制作したがるワケ

 また、番組制作サイドが抱える事情も恋愛リアリティーショーの作成につながっていると鎮目氏は話す。

「番組に出演する素人さんを1か月拘束したところで、芸能人と比べれば支払うギャラは微々たるもの。番組内で人気者が現れれば、今度はその人を軸に続編の作成も行える。番組が一度ヒットすれば、続編のスポンサー集めもスムーズです。

『ラブデッドライン』のように旅番組の要素を加えれば、背景となる映像も美しく場面映えがいい。同じ予算で芸能人を起用した番組を作るより、未完成な素人出演者を中心とした番組作りのほうが、その後の展開を産み出しやすい。また、完成された芸能人を起用するよりも、素人出演者をスターとして育て上げるリアリティーショーのほうがビジネスとしても伸び代があるんです」

 金を生む卵として、制作サイドにとっても“禁断の果実”として重宝されている恋愛リアリティーショー。それゆえ、番組には過剰な演出もつきものだ。現に20年5月には、フジテレビで放送されていた『テラスハウス』へと出演していた木村花さんが、死去するという悲劇も起きた。

「素人さんを長い間、テレビに出すというのはプレッシャーにもつながります。若い子は特に多感ですし、SNSの誹謗中傷やバッシングにも耐えられない。自分がテレビ画面越しにどう映っているのかも気になるでしょう。番組制作者は出演者のメンタルケアや番組出演時の悩みをしっかりと聞くことが大切です」

 視聴者の心をつかんで離さない恋愛リアリティーショー。今後も次々と作品が生まれていくのだろうが、リアルで人が傷つくことがあってはいけない――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。1992年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)
公式X(
https://twitter.com/shizumehiro)