新卒採用において売り手市場が続くなか、企業も内定者の囲い込みに必死だ。今や本人による内定同意書のサインだけでは不十分とばかりに、親にもせっせとアピール。企業が内定者の親に対し、子どもの入社について「確認」を得ることは通称「オヤカク」と呼ばれ、近年その割合は顕著に増加している。
「就職情報サイト『マイナビ』が、毎年就職活動をした学生の親1000名を対象に行なっている『就職活動に対する保護者の意識調査』の結果によれば、2022年度に『オヤカク』を受けた人は48.3%と内定者の約半数。内定式・入社式へと親が招待された割合も18.3%と、約5人に1人が企業側から“親子同伴”で子どもの門出を祝うことを打診されており、もはや就職活動は子どもだけの問題ではないことが浮き彫りになっています」(就職活動事情に詳しいジャーナリスト)
一方、18年度に就活を行なった学生の親への調査では「オヤカク」を受けた人は17.7%。ここ5年で一気に親の意向をうかがう企業が増えていることが分かる結果になった。
なぜ内定者の「オヤカク」をする企業が増えているのか。「オヤカク」の実態を、就活事情や労働問題に詳しい千葉商科大学准教授の常見陽平氏に解説してもらった。
「就職活動の場において保護者対策自体は、10年以上前から大なり小なり存在していました。しかし、近年『オヤカク』が重視されるのにはいくつかの要因が絡み合っています。
まず今はネット環境が整い、SNSも普及した。これにより、いわゆるブラック企業や劣悪な労働環境があるという認知が親世代の間でも広まりました。そういう情報を得ると、子どもを悪質な労働環境で働かせたくないと考えるのは親の常。
とはいえ“誰もが知っているような大企業ならどこでもいい““同じ会社に一生勤める”などとは考えない若者も増えるなど、価値観が多様化しています。同時にIT企業をはじめとするベンチャー企業の中には飛躍的な成長を遂げている企業もあり、親世代が知らなくても子ども世代にとっては身近、という企業はどんどん増えている。
社会の多様化にあわせて、子どもの労働実態が心配なケースが親世代の間で増えているという事情があるんです」(常見氏)