■ドラマの高い人気と低いコア視聴率……テレビ界が抱える矛盾
CMスポンサーの商品の購買力が強いコア層の数字が確保できれば、単価の良いCMが入ってくる。そのため今、テレビ界ではコア視聴率が最重要視されているのだ。
「『君ここ』はTVerの登録者数やSNSの大反響からも分かるように、シリアスで泣けるシナリオや永野さん、山田さんの繊細な演技の評価が高く、好意的な声もとても多い。ジュエリーブランド『ハリックァ』の公式サイトで買える4万3000円の指輪は、『君ここ』に登場した直後、全サイズ完売。これもドラマ人気の高さの証明ですよね。
にもかかわらず、『君ここ』は、世帯視聴率だけでなくコア視聴率も良くないんです。第4話(1月29日)は2.1%、第5話(2月5日)は2.3%とかなり厳しい数字になっています」(前出の制作会社関係者)
TVerのお気に入り数、SNSの大反響からもドラマの高い人気は明らかなのに、リアルタイムでの数字は世帯視聴率もコア視聴率も取れない――この矛盾が意味するものとは。
前出の制作会社関係者が言う。
「13歳から49歳のコア層よりも上の世代、シニア層ではまだまだテレビは生で見るもの、という認識がある。シニア層に大人気の『相棒』の視聴率が10%を優に超えるのもそういうことでしょう。
一方で、今、各局が最重要視しているコア層は、リアルタイムでドラマを見る習慣がなくなりつつあります。好きなドラマはTVerやその他配信サービスなど視聴するのが当たり前となっており、自分の好きな時間に、ゆっくり、じっくり楽しむと。スマホが普及する前から“リアタイせず録画”が浸透していた層でもありますよね。
つまり、高いコア視聴率を取ろうと若い層を狙ったドラマ作りをしても、その層はそもそもリアルタイムでドラマを見ない。その結果、SNSや配信は大バズリするのに視聴率は上がらず、結果、テレビ局は儲からない、という現象が起きてしまっています。
TVerはいくら回っても、入ってくる広告料は地上波に比べて10分の1ほどだといいます。これはTVerの仕組みの問題なんですが……この矛盾、ジレンマが、現在のテレビ各局を苦しめているのは間違いないでしょうね」
若い層には刺さっているのに、視聴率は上がらず、局の収益にもつながってこないと言われる『君ここ』。同作品は、今のテレビ界が抱える“矛盾”を代表するドラマなのかもしれない――。