国内で初めて、ティラノサウルス科の“骨”の化石が発見されたことが2月15日、明らかになった。発表したのは、共同調査を行なった熊本県の天草市立御所浦白亜紀資料館と福井県立恐竜博物館。
2014年10月に、熊本県天草郡苓北町の地層で見つかった大きさ15センチほどの2つの欠片で、この化石が太古の地球で、食物連鎖の頂点に君臨した生き物の下顎の骨(左歯骨と右歯骨)だったことがわかったのだ。それにしても、なぜティラノサウルス科の骨であると判明するまで10年弱もの歳月を要したのだろうか。そして、ティラノサウルス科の恐竜の骨が国内で「初発見」されたという事実は、何を意味するのだろうか――。
発掘作業に参加した福井県立恐竜博物館の宮田和周探究・体験課長に“恐竜物語”を聞いた。
「ティラノサウルス科の恐竜は、恐竜時代の最後にあたる、後期白亜紀(8300万年前~6600万年前)に北米とアジアに生息していました。ティラノサウルスと聞くと皆さんが思い浮かべるのは、映画『ジュラシック・パーク』に登場する典型的な大型の肉食恐竜ですよね。
あれはT・レックス(ティラノサウルス・レックス)といって、ティラノサウルス科の中でも頭が異常に大きいものなんです。しかし、ティラノサウルス科というグループは15種類ほどいることがこれまでの研究結果でわかっています。今回、発表された化石は、ティラノサウルス科の恐竜ではあるものの、皆さんがティラノサウルスと聞いて思い浮かべるT・レックスとは別の種類です」(宮田氏)
宮田氏によると、現在までに見つかっている15種類ほどのティラノサウルス科の化石のうち、11種ほどの化石は北米で発掘されたという。アジアでこれまでに見つかったティラノサウルス科の化石は4種ほどで、モンゴルや中国の内陸部だった。今回、熊本の地層から見つかった化石は、従来では考えられない、海沿いの場所からの発見だったという。
「東アジアの、ましてや島国である日本は、恐竜の化石発掘に関して、まったく注目されていなかったんです。ただ、今から9年ほど前の15年に、長崎市でティラノサウルス科の大きな歯の化石が出てきた。これはBBC(イギリスの公共放送局)が報道するほど大きな話題となりました。
とはいえ歯の化石は、骨と比べると見つかりやすいのも事実。たとえば、ティラノサウルス科は右顎だけで10以上の歯が生えていて、一生のうちに何度も何度も歯が生えかわる。仮に一か所の歯が10回生えかわるとすると、上下左右合わせて生涯合計400本ぐらいの歯が入れかわっていたことになりますので、骨と比べれば、圧倒的に見つかりやすい。そうは言っても、日本から歯の化石が見つかるだけでも、とても稀なことです。
また、骨の中でも、背骨や肋骨は体の中でもその数は多い。ただ顎の骨は限られますよね。そんな化石が日本から出てくること事態が、ものすごくレアなんです」(前同)