■まさかの5年放置……調べてみたら「普通じゃない」

 また、化石が発見された際に、重要視されるのは、発見個所の希少性だけではないという。「どれだけ古い化石なのか」も重要なポイントだ。今回見つかった顎の化石は後期白亜紀(8300万年前~6600万年前)の中で7400万年ほど前のもので、長崎市で15年に見つかった歯の化石は約8000万年前とさらに古いものだった。記録価値という観点だけから見れば、長崎で発見された歯の化石のほうが高いという。

「ティラノサウルス科の化石が見つかる時代は、後期白亜紀の中でも本当に最後のほう。そのため化石の記録はやや後半に集中しています。一番“最近”となる6600万年前頃に近づくと、大きなティラノサウルス(北米)やタルボサウルス(アジア)といった映画『ジュラシックパーク』シリーズでもお馴染みのティラノサウルス科の恐竜が現れる。

 恐竜は北米とアジアを往来していたのですが、どちらの地域で生活していた種がより原始的でより進化的かといったことを明らかにするには、化石の年代がわかることも大事。中国やモンゴルで見つかっている化石は正確な時代が判明していないものも多い。そうした中で、今回、年代がわかる地層から希少性の高い骨の一部が発見されたのは、画期的な出来事でもあるんです」(前出の宮田氏)

発見された化石のおよその位置(画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館/福井県立恐竜博物館)

 宮田氏は「誰も島国の海辺からティラノサウルス科の骨が出てくるとは思っていなかった」と言うが、自身もそうだったと愉快そうに笑う。

「最初発見したときは、一見、真っ黒な石。木の化石なのではないかと疑ったこともあるほどで、この欠片が重要な恐竜の化石だとは全然思っておらず、正直、調査も“後回し”でした(笑)。ただ、これは、化石研究の世界ではざらにある話です。形がわかりやすく、データが取れそうなものから研究を行なっていくので、見かけの良くない化石は後回しになるものです。

 今回は発見時から10年たってからの発表となりましたが、そのうち分の5年ぐらいは保管所で放置していたというのが本当のところ。これは、どうかな……と思って調べ始めたらティラノサウルス科の骨だということがわかったという流れです」(前同)

 調査を始める前のクリーニング段階で、「生き物の骨」であることはわかったそうだが、地層の中での保存状態がいいとはいえず、調査は難航。CTを使ったところ恐竜の歯にあたる部分が含まれていることがCT写真からわかり、慎重な作業を重ねた。

CT画像から復元した左歯骨の内部(画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館/福井県立恐竜博物館)

 この化石の注目となるポイントは、右と左の顎の骨がくっついているという点だという。

 普通、死んだら骨はバラバラになるものだが、これらがくっついているということは、周辺に頭のパーツが埋もれていた可能性があるということ。宮田氏は「今後調査して発掘していくことになると思います」と更なる発見へと期待を高める。

 なお、今回発見された化石は、3月20日にリニューアルオープンする天草市立御所浦恐竜の島博物館で同日より常設展示。福井県立恐竜博物館では、同日からレプリカを展示するという。まだまだ謎に包まれたままの恐竜時代。さらなる発見に期待したい。