2023年に日本国内でヒットした映画といえば、興行収入157億円超えを記録した『THE FIRST SLAM DUNK』や『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(興行収入・138億円)、山崎賢人(29)主演の『キングダム 運命の炎』(興行収入・56億円)などなど。いまや映画もドラマも“原作付き”が主流の時代。

 それはアニメも同様で、エンタメ情報ウェブマガジン『TVマガ』(WonderSpace)の企画『100人に聞いた!2023年いちばんおもしろかったアニメランキングベスト8』で、1位に輝いた『葬送のフリーレン』を筆頭に、トップ5はすべて人気マンガのアニメ化だった。

※画像はアニメ『葬送のフリーレン』の公式X『@Anime_Frieren』より

 原作作品の映像化がヒットを続けるなか、24年1月11日の放送開始からネットを中心に盛り上がりを見せている原作漫画がないオリジナル脚本のテレビアニメがある。それが木曜23時56分から放送されている『勇気爆発バーンブレイバーン』(TBS系)だ。

 テレビ誌編集者が物語のあらすじを解説する。

「同作は、人型装甲兵器が実用化された近未来が舞台。ハワイ・オアフ島で行なわれた日米合同軍事演習に正体不明の武装勢力が襲来。軍人たちは、壊滅の危機に瀕する。そんな時、陸上自衛隊員であるイサミ・アオの眼前に喋る人型巨大ロボット『ブレイバーン』が姿を見せ、イサミを搭乗させて敵を見事に撃退、というところから物語は始まります。

 監督を務めるのは、80年代から活躍し、最近では『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(15年~17年)や『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(23年)などのメカニック作画監督を務めたことで知られる大張正己さんです」

 軍事的なリアリティのある世界観に“スーパーロボット”が紛れ込んだようなこちらの作品。放送開始からX(旧ツイッター)の国内トレンド1位となるなど大反響を呼んでいる。その勢いはすさまじく、アニメ総合情報サイト『Nアニメ』(ドワンゴ)では『今期アニメランキング』で堂々の1位に輝いた(※2月28日時点)。いったい何がそんなに視聴者を熱くさせているのか。

 その理由は、「事前の仕込みにある」と、アニメ・特撮研究家で日本SF作家クラブ会員の氷川竜介氏が話す。

「ロボットアニメの巨匠・大張監督オリジナル作品ということで、アニメファンの注目は事前に集めていました。しかし、放送前までは“もし現実の軍事組織が運用するロボット兵器があるとしたら”という、いわゆる“リアルロボット”をキービジュアルの前面に出していたんです。実際に第1話の終盤まで、“本格ミリタリー系のロボットアニメ”というフリをしていましたしね」(氷川氏)

※画像はテレビアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』公式X(@bangbravern)より

 本格ミリタリー系ロボットアニメのフリをしていたとはどういうことか。

「現実世界でいうところのRIMPAC(米海軍主催多国間共同訓練)のような軍事演習中に宇宙から侵略を受け、これを人型装甲兵器に乗った主人公たちが倒していく話なのかなと思いきや、突然喋るロボット“ブレイバーン”が眼前に現れる。実は“リアルロボットものの世界観にスーパーロボットが飛んでくる”という作品だったことが視聴者にわかるわけです」(前同)

 視聴者を引き込むための仕掛けは他にもたくさん用意されている。

「たとえば主題歌が流れるシーン。普通なら単なるアニメとしての演出ですが、この作品の場合、どうやらブレイバーンが自分で歌って自分で放送しているらしいぞと。劇中のリアルロボット世界の人たちの耳に本当に聞こえていて、主人公が“なんだこの歌は!?”ってツッコむんですよ。

 さらに物語が進むにつれて喋るロボットであるブレイバーンは、どうやら主人公のイサミに特別な感情を抱いているらしいということもわかってきて、人間とロボットの恋物語なの? と思わされたり。なんかよくわからないヘンなアニメが始まったぞ、とざわついたわけです」(同)