■70年前の煽り文句は「アメリカ映画を凌ぐ特殊技術撮影」

 さらに、すべての始まりである初代『ゴジラ』(1954)は、同年にビキニ環礁での核実験が原因の「第五福竜丸の被爆事件」がきっかけで生まれた、核兵器の恐ろしさを考えさせられる作品。これを筆頭に、『ゴジラ』は反戦・反核を意識して作られているところがある。

 そして今回の『アカデミー賞』では、世界初の原子爆弾を開発した物理学者ロバート・オッペンハイマーの伝記映画『オッペンハイマー』も作品賞や監督賞など7部門を受賞している。

※画像は『ゴジラ-1.0』の公式X『@godzilla231103』より

 核兵器と切っても切れない作品が同時にアカデミー賞に輝いたことで山崎氏は、

「作っている時はまったくそういったことは意図されていなかったと思いますが、出来上がった時に世の中が非常に緊張状態になっていたというのは、運命的なものを感じます。

『ゴジラ』は、戦争の象徴、核兵器の象徴であるゴジラをなんとか鎮めようとする話ですが、鎮めるという感覚を世界が欲しているのではないか。それがゴジラのヒットの一部につながっているんじゃないかと思います」

 と、授賞式直後の取材でコメントしているのだ。

 また、『ゴジラ-1.0』が、『ゴジラ』生誕70周年に、アメリカで最も権威あるアカデミー賞で視覚効果賞――特撮技術の賞を獲得したことは、非常に感慨深いものがある。

 というもの70年前の初代『ゴジラ』の予告には「アメリカ映画を凌ぐ特殊技術撮影」という煽り文句があった。今回、アカデミー賞で邦画初の視覚効果賞で選ばれたということは、同作においては、アメリカ映画を超えたとも言えそうなため、

《アメリカ映画を凌ぐ特殊技術撮影が本当になったの初めて見た》
《これで名実ともに「アメリカ映画を凌ぐ特殊技術撮影」と認められたわけだな…すげぇよゴジラは》

 といった声も、SNSには寄せられている。

 授賞式の壇上で山崎氏はスピーチを行なった際に、こう話していた。

「40年以上前に『スターウォーズ』と『未知との遭遇』を見たショックからキャリアをスタートさせた私にとって、この場所は望む事すら想像しなかった場所でした。

 ノミネートの瞬間、私たちはまさにロッキー・バルボアでした。強大なライバルたちの前でリングに立たせてもらえた事はすでに奇跡でした。

 しかし私たちは今ここに居ます。この場所から遠く離れた所でVFXを志しているみんな! ハリウッドが君たちにも挑戦権がある事を証明してくれたよ!」

 初代『ゴジラ』に感銘を受けた庵野秀明氏(63)が『シン・ゴジラ』を撮り、山崎氏が『ゴジラ-1.0』を撮った。

 今度は『ゴジラ-1.0』に衝撃を受けた若い世代が、新しい『ゴジラ』を撮り、ハリウッドに挑戦する日が来るのかも――。