中国で、年に一度の国会にあたる「全国人民代表大会」(全人代)が3月11日、2024年の経済成長率の目標を「5%前後」とする政府活動報告などを承認して閉会した。

 李強(リー・チャン)首相の掲げる「5%」という数字は、昨23年の目標と同水準。昨年はコロナ禍からの反動もあり、中国経済は5.2%の成長を遂げるなど堅調だった。とはいえ、不動産不況などにより今後、中国の経済成長は鈍化するだろうとの見方が国際的には強く、昨年の好景気は長くは続かないとする見方が大勢を占める。

 中国取材を担当する民放キー局記者が中国経済の実情を話す。

「中国では現在、若者の就職難が超深刻。23年6月には16~24歳の失業率が21.3%と過去最高を記録しました。それでも李首相は5%前後の経済成長を目標に掲げるなど強気な姿勢を見せていますが、全人代の閉幕日となる11日には、およそ30年続いてきた恒例の首相記者会見を拒否。メディアを避けることで経済成長の鈍化に関する追及を避ける思惑も垣間見え、政府の透明性には疑問符がつきます」

 李首相が掲げる成長目標と実体経済に大きな乖離が生じている中国。では、実際の中国経済の“リアル”はどうなのか。

『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館)の著書があり、自身も中国で就業経験があるジャーナリストの西谷格氏は、「当局は社会不安を招きたくないのか、中国内のニュース報道ではネガティブ情報は目立たない」と“実態経済”が国内では伝えられにくいと指摘する。

 その一方で“中国のX(旧ツイッター)”と呼ばれるSNS「微博(ウェイボー)」や、中国版インスタグラム「RED」上では、今後の中国経済活動を担うであろう若者たちの不安や本音が垣間見えるという。

「卒業シーズンを迎えた今もなお、“卒業したら失業だ”といった悲痛な文言がSNS上には並びます。中国内では18年頃から大卒者の就職難が叫ばれ始め、若者層の失業率が過去最高となった23年6月を機に、同年12月まで中国政府は失業率の公表を停止したのです。

 その後、24年1月に失業率の公表を再開。23年12月の若年層失業率について”14.9%”だと発表しました。しかし、この数字からは就職活動中の学生が除外されている。失業率の公表を停止した半年間で大幅に数字上の失業者は減った形ですが、これは統計の取り方を変えたから。学生が就職難に喘ぐ就職氷河期であることを中国政府は必死に隠そうとしている状態です」(西谷氏)