■コンビニは「ご当地商品」が得意なワケ

 全国展開するコンビニが地域限定商品を販売する背景のひとつとして、ローソンで商品企画も担当していた前出の渡辺氏は、「地域密着」があることに言及する。

「全国各地にお店があるので、ご当地商品は企画しやすいんですよね。そして、そもそも日本人は“限定”という言葉に弱い。

 ご当地商品といえば旅行者が買うイメージもあり、観光地でもない地方で誰が買うのかなと思うかもしれませんが、逆です。むしろ、ふだんの買い物に刺激が少ない田舎でも売れる。全国津々浦々で売れる鉄板企画なんです。

 しかも、ご当地商品は、その後、継続して販売するわけではないことが多いので、“今食べておかなくては”というレア感も漂います。店側は集客になって売上が上がるし、お客さん側も日常の楽しみの一つになる。どちらにとってもメリットがあります」(渡辺氏)

 そんなご当地商品の味が決まるまでには、さまざまなパターンがある。渡辺氏によれば、商品の企画をするコンビニバイヤーが自身の判断で商品の味を決定するケースもあれば、社員の声や広告代理店、メーカーの持ち込み企画のこともあるとのこと。ちなみに、発売されれば話題になりやすいご当地モノだが、全国的な定番商品になりにくいのには理由がある。

「前提として、”ご当地からあげクン”はフレーバーを加えるだけなので作りやすいんですよね。しかもパッケージは紙で、プラスチックのものより低コストで対応できる。ただ、全国で売るとなると相応の販売実績が必要となるため、なかなかそのハードルを越えるのは難しい。

 つまり販売エリアを限定的に、効率的な製造数を一時的な話題性で売り切ったらいいという考え方なんです。ご当地からあげクンの中にも、中部エリアの『からあげクン 山ちゃん手羽先味』や近畿エリアの『からあげクン ほりにし』など全国発売された例はありますが、その数はかなり少ない。基本的には地域限定で、継続商品にはなかなかならないのが実情です」(前同)

 人気商品であり、その定番の味が消費者に愛される『からあげクン』。ローソンの看板商品がご当地限定で展開される背景には、少し”辛口”な事情があったのだ。

渡辺広明
1967年生まれ、浜松市出身。 東洋大学法学部経営法学科卒業。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザーを経て約16年間バイヤーを経験。日用品を中心に、さまざまなメーカーと約780品目の商品開発に携わる。
顧問、講演、メディア出演等幅広い活動を行っており、現在フジテレビ『LiveNews α』レギュラーコメンテーター。Tokyofm 『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ、YouTube 『やらまいかビジニュース』。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ)、『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版、馬渕磨理子との共著)等。