「アテンションプリーズ」

 そんな黄色い声が店内から聞こえてきそうなのは、3月22日から24日までの3日間限定で東京・麻布十番にオープンしたカフェ。その名も『JAL Cafe 麻布十番』だ。店名からも分かる通り、カフェの運営元は航空事業で知られる日本航空である。

 ふだんは、旅客機を空へ飛ばし、人々を街から街へと運んでいる日本航空。航空事業を手掛けるはずの同社がなぜ、カフェを街中にオープンしようと考えたのか。同社内でカフェの開店を提案した韓国支店・貨物輸送部長の金健東さんが、その経緯を流暢な日本語で話す。

「ふだんは韓国で働いているのですが、7年前に本社がある品川で研修を受ける機会があったのです。その際に、日本の文化や自然、食べ物に触れる機会がありました。そのときに体験した日本の伝統文化。これを航空事業社である日本航空が世界へと向けて発信するにはどうしたら良いか? と考えた際に思い浮かんできたのが、飲食事業への挑戦だったというわけです」(金さん)

『JAL Cafe』を社内で発案した金健東さん 撮影/編集部

 金さんが日本で思いついたアイデア。この考えを会社へと提案するチャンスが1年半ほど前に訪れる。全世界で猛威を振るったコロナウイルスの影響で、日本航空が運航する飛行機の本数も大幅に減少。金さんが所属する日本航空の空港本部でも、未曽有の危機に直面し、新しいビジネスモデルを創造しようと22年11月から社内ビジネスコンテストが開催されたのだ。

 ビジネスコンテストの審査員を務めた同社・ソリューション営業本部・副部長の猿渡美穂さんが話す。

「空港本部のビジネスコンテストに寄せられたアイデアは全部で66件。そのうち、金の企画を含む4件が入賞しました。飲食店を運営するノウハウが社内にはなかったことから、カフェ企画に反対する声があったのも事実です。一方、弊社ではクッキーやあんぱんなど年間に20個ほど、幅広く商品開発を手掛けています。これらの商品を活かしたビジネスを行なわないのは、もったいないとも思い、カフェ開業を決断しました」(猿渡さん)