■「メルカリ」ユーザーと「スキマ時間に稼ぐ」親和性の高さ
働き方評論家として様々な労働環境を見てきた前出の常見氏は、「メルカリユーザーの価値観から考えると、隙間時間をお金にかえるという発想は親和性が高い」と話す。
「もともとメルカリは、主に個人間による物品の売買を支援するサービスとして成長してきました。“タンスの肥やし”と言われるような放っておいたらゴミになるだけの不用品を、売りに出したらお金に変わるという体験を多くの人に広め、個人の換金ビジネスを浸透させたとも言えます。
『メルカリ ハロ』も、何もしないでいれば無為に過ぎる時間が、そこへとアクセスすればお金に変わるかもしれないという可能性を示した点で、メルカリユーザーの価値観とマッチしています」(前同)
一方で、「求人」する側のスタンスは問われそうだという。たとえば『メルカリ ハロ』を使って求人をした場合、接客業の現場においては、履歴書・面接なしに従業員を雇うことになる。そのため、“欲しい人物像と違った”と雇用側と労働者側で齟齬が生じる可能性が出てきかねない。
「さまざまな業界で“人が足りない”と言いますが、自社が抱えている課題が“量”に関する”人手不足”なのか、“質”に関する”人材不足”なのかをきちんと分けて考えなくてはいけません。“人手”は物を運ぶ、データを入力するなど、作業的な領域。“人材”は、能力・資質が求められる領域です。
スポットワークである『メルカリ ハロ』がカバーできるのはあくまでも人手不足領域でしょう。『メルカリ ハロ』が利用者にあった仕事の提供をできるか、ということが、今後問われると思います。逆にいえば、人手不足領域以外の仕事は『メルカリ ハロ』での求人に向いていないということでもありますね」(同)
常見氏は「異業種の人材ビジネス参入だからこそ、それまでの常識を覆すサービスを展開していってほしい」と期待を寄せる。ベンチャー企業として革新的なサービスを展開してきたメルカリは、労働市場に一石を投じるのか。
常見陽平
リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年より千葉商科大学国際教養学部専任講師。2020年より准教授。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。
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