今年、結成40周年を迎えた「たけし軍団」。師匠であるビートたけしと歩んだ破天荒な道のりは、今なお芸能史に燦然と輝く。

 ガダルカナル・タカ(66)、つまみ枝豆(64)、ダンカン(64)の三者に、コンプライアンスなど“どこ吹く風”な昭和テレビの舞台裏を聞いた――。

■台湾で『たけし城』パクリ番組

――1980年代に空前のブームを巻き起こし、視聴者参加型バラエティ『痛快なりゆき番組 風雲!たけし城』(TBS系)。今年、アマゾンプライムで34年ぶりに復活します。ダンカンさんは作家として、ステージのアイデアも出していたんですよね?

ダンカン 代表的なのは、参加者が池の浮島を飛び移りながら、向こう岸へ渡る“竜神池”ですね。

枝豆 新しい案が出ると、そのステージのセットを組んで、ADではなくて軍団がみんなでテストしてましたね。それで面白くなければ、即座にセットをばらしちゃう。本当にお金をかけた番組でしたよ。

――神奈川県のTBS緑山スタジオに、総工費1億円をかけて“たけし城”のセットを築いたのは、テレビ業界伝説ですよね。

枝豆 一般参加者の応募ハガキも、毎週何万通も局に届いていましたから。

タカ 軍団ファンの方もたくさん参加してくれたよね。とある親子大会では、(井手)らっきょが、自分の大ファンだっていう若妻をナンパして、本番後に家まで遊びに行っちゃったり。
枝豆 あったあった! けど、子どもが「らっきょが家に来た!」って大興奮して寝てくれなくて(笑)。

ダンカン それでも、アントニオ猪木さんのモノマネとか披露して、どうにか子どもを寝かせて、ベッドで「たけし城第2部」を開幕したそうですよ(笑)。

タカ 今ではとんでもないように思われるけど、当時はこんな不倫話をラジオや、テレビで平気で披露していましたから。

枝豆 俺とタカ坊、らっきょの3人でやっていた大阪のラジオ番組には「俺らにやられたネーちゃん、ハガキをください」ってコーナーがあって、そこへ「このやり逃げ野郎!」ってお便りが送られてきたりね。

――話を『たけし城』に戻します。同じTBS系の障害物レース番組『SASUKE』がオリンピック種目になるかもと話題ですが、その元をたどると、『たけし城』に行きつくのでは?

枝豆 『スポーツマン№1決定戦』(TBS系)という『SASUKE』の前身の番組のプロデューサーが、「たけし城をオマージュして作った番組がすごい人気で!」って僕に話していたので、それは間違いない。

タカ あと、『たけし城』をコンパクトにしてスタジオでやるというアイデアで誕生したのが『東京フレンドパーク』(TBS系)ですよ。

――色んな番組に影響を与えているんですね!

タカ 海外人気もすごかったので、当時は無茶がきいた東南アジアや南米に、『たけし城』をパクった番組がたくさんありましたね。

枝豆 僕とラッシャーと、らっきょの3人が、台湾の“ニセたけし城”を偵察に行くっていう企画があって、現地で、“台湾版たけし軍団”らしき出演者を見つけたりね。

――そこまでそっくりに作られていたんですね。

枝豆 その番組の台湾人プロデューサーが、「これは私のアイデアだ」の一点張りだったので、僕ら3人は「出演させてくれ」ってお願いして、その番組で大活躍をして鼻を明かしてやったんですよ。そしたらプロデューサーは、「君らすごいね!レギュラー出演してみない?」って誘ってきたんですよ。バカ! こっが本家だよって(笑)。

■たけしが真顔で「〇〇作ろう」

――この当時、忘れられないのが、たけしさんと軍団さん(計12名)が講談社を襲撃した、「フライデー殴り込み事件」です。みなさんは現行犯逮捕され、大塚警察署に連行されましたが――。

ダンカン 逮捕されたっていうのに、軍団はお祭り気分なんですよ。まず、名札を持たされて、正面と横顔の逮捕写真を撮らされるんですけど、みんな変顔をして警察官を怒らせたり。

タカ 3人1組で順番に調書を取られるから、待っている連中で取り調べコントとかもやってましたね。あと、大塚警察署の目の前の大通りに自動販売機があったんで、若い奴らにジュースを買わせに行かせたんですよ。それを見た、警察官が血相を変えちゃって。

ダンカン 軍団は拘束されていた身だから、勝手に出歩かれると、警察側の管理不行き届きになっちゃいますからね。

タカ それまで軍団を怒鳴りつけていた警察官たちが、一転して、「お願いだから、お前らが勝手に外に出たことは口外しないでくれ」って弱気になっちゃってね。これはもう時効だから、言ってもいいよね(笑)。

――一方、キレたら何をするか分からない“軍団最凶”といわれていた枝豆さんには、襲撃の招集連絡がこなかったと聞いています。

枝豆 僕は、事件の翌朝の、らっきょからの「殿が捕まった!」って電話で初めて襲撃騒動を知りましたから。それで、テレビで講談社が記者会見であーだこーだ言っているのを見て、「こいつらを何とかするぞ!」って会見場へ突撃する準備を始めたんです。

――カチコミですね?

枝豆 でも、いざ出発しようとしたときに、たけしさんから電話があって、「おまえらの面倒を一生見るからよ。悪いけど、今は動かないでくれ」って言われて、思いとどまりまったんです。

タカ ちょうどその頃、大塚警察署で朝を迎えていた我々は、テレビで外の様子を知るわけですよ。警察署の周りをヘリコプターが飛び交っているし、ものすごい人だかりで、「これはすごいぞ!」って、すかさず窓のカーテンを開けて、みんなで外に手を振っちゃって。

ダンカン それに警察官が気づいて、「カーテンを開けるな! 顔を出すな!」って、また怒られてね。

枝豆 僕が真剣に悩んでいたときに、みんなそんなことやってたの(笑)?

タカ でも、フライデー事件の後は、たけしさんも軍団も、芸能界には二度と復帰できないって本気で考えていましたよ。

枝豆 事件の後、謹慎期間中のある日、たけしさんが軍団を集めて今後のことを話したんです。そしたら、神妙な顔つきで「ヤクザ組織を作ろうか?」って言ったんですよ。それで、たけしさんが目の前に座っていたタカ坊を見て、「おまえ、撃てるだろ?」って拳銃を撃つ仕草をして、みんなあっけにとられている中で、タカ坊が「はい!」って答えて。おいおいウソだろって思いましたね(笑)。

ダンカン 軍団は、大将が黒って言ったら黒になるグループですからね。俺もそれを聞きながら、心中で「入れ墨を入れないとな」ってまじめに考えましたもん。

タカ でも、翌日にはたけしさんが、「ヤクザだとすぐに死んじゃうな」って思いなおして、「やっぱり建築業者にしようか」って、話が変わってましたけど(笑)。

(つづく)

 

たけし軍団40周年プロジェクト
舞台『ウスバカゲロウな男たち』

脚本・演出:広瀬 格
【出演】ガダルカナル・タカ/つまみ枝豆/松尾伴内/ダンカン/ラッシャー板前グレート義太夫井手らっきょ/柳憂怜
【場所】シアターサンモール
(東京都新宿区新宿1-19-10サンモールクレストB1)

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