■ハイクオリティな作品を作るためには――

 しかしこの“TBSドラマ”のクオリティを確保することは、容易なことではないようだ。

「平川監督は演者にリハーサルの段階からしっかりと演技指導をして、丁寧に丁寧に撮影を進めていく監督だといいます。“監督”のイメージを考えると当然のように聞こえるかもしれませんが、近年のドラマ業界では、こうした監督は減りつつあるんですよね」(前出の民放キー局関係者)

 近年のテレビ不況による制作費の厳しさから、現在のテレビドラマはとにかく“スケジュール通り”が求められていると言われている。その影響も大きく、ドラマの撮り方も変わりつつあると言われているのだ。

「ひと昔前は映画だけでなくテレビドラマでも、“監督のこだわりで撮りなおした”とか予定よりロケに日数がかかったという話もありましたが、いまはスケジュール通りに進めるのが一番。撮り切れなくて別日に、なんてことになれば人件費など、物凄い追加予算がかかってしまいますからね。

 ですので、近年は演者に細かく演出をつけることもなく、俳優にある程度任せてどんどん撮影を進める監督も多くなりつつあるといいますね。もちろん、監督の中には“OKライン”があり、そこを下回ることはない、ということなんでしょうが」(前同)

※画像は『Destiny』の公式X『@Destiny_tvasahi』より

 平川氏は、“こういう作品を撮りたい”“こういう芝居をして欲しい”というのを明確に持っているからこそ細かく指導をし、『ぎぼむす』他、名作を次々と生み出し、高く評価されているのだろう。

「とても丁寧に撮影していくので、それは時間がかかりますよね。

 第1話には“早朝の桜”が出てくるシーンがあり、前日からずっと撮影が進められて終了時刻が29時半(朝5時半)だったとか。また、スタッフが終電では帰れなくて、タクシーで帰ることも珍しくない、と聞こえてきていますね。

 惨敗続きの月9だけに『366日』は成功を収めないといけない。だから、クオリティの高い作品を――そうした背景があり、より良い作品を作るために現場は超ハードになっていると。多くの称賛の声が上がった『silent』や大ヒットしたTBSのドラマのようなクオリティを確保するのは、やはり容易ではない、ということでしょうね」(前同)

 第1話冒頭の桜を見つめる広瀬など、映像の美しさとこだわりを感じさせる演出など見どころは多い『366日』。ハードな現場から生み出される壮大な愛のドラマは、月9ブランドを復活させられるだろうか――。