■公道での進路妨害、無断撮影の法的な問題は――

 今、X上で話題となっている女性の自転車の運転。法律の専門家によれば、厳密にはアウトとなるとのこと。一方で、女性が車の前に立ちふさがったり、スマホで撮影したりする行為についてはどうなのだろうか。

「車では、パッシングなどを繰り返し、他のドライバーへと危険行為を繰り返す“あおり運転”というものがあります。しかし、今回の動画の女性のように、車の目の前で止まって進路妨害をしているだけでは“あおり”にはあたりません。“あおり”があったとみなされるのは、あくまでも急な進路変更を行なったり、急ブレーキをかけたりするなど、交通障害を発生させる妨害運転があった場合です」(前出の松井弁護士)

 一方で今回、自転車を運転している女性が被害に遭ったとも言える写真・動画のSNSへの投稿や、そして道路上の撮影行為はどうなのだろうか。

「写真撮影についてですが、撮影するだけなら罰則はありません。法律上公道はある程度、自分のプライバシーを放棄している場所という考え方なんですね。

 ただし、撮影した写真を個人が特定できる形でSNSなどへと拡散した場合は別です。撮影された側が名誉毀損や精神上の苦痛を受けたなどという理由で、民事上の損害賠償請求をすることができる可能性はあります。この場合は撮影者及び、投稿者に悪意があったかどうかが違法性の争点になると思います」(前同)

 仮に交通違反をしていないとしても、マナーを守らなければ今回のように別のトラブルへと発展する可能性は大きい。ただでさえ、自転車事故は後を絶たないのだ。松井氏は「最近ますます自転車を厳しく取り締まろうという動きはある」と指摘する。

 背景には、スマホを見ながらの運転や、電動キックボード、モペッドと呼ばれる電動自転車などの存在もある。自転車による交通違反が問題視される中、政府は今年3月、自転車にも反則金を課す制度を盛り込んだ道交法改正案を閣議決定したばかりだ。

 一瞬にして命を失う重大な事故につながりかねない道路上。自転車における交通ルールが厳格化されるのも、やむを得ないことなのだろう。