■違法モペットで事故発生「一瞬で人生が台無しに」

 ネットで気軽に購入できるという販売方法も要因で、街中を走り回る違法モペッド。他にも、違法モペッドが街中を走り回る大きな原因があるそうだ。それを前出の疋田氏は、「モペッドユーザーがモペッドを自転車として利用したいからでは」と指摘する。

「自転車だと思っていました、と言えば交通違反の対象にならないと考えている人が多いのだと思われます。自転車だとヘルメット非装着の罰則もないですし、乗車中に髪型だって乱れない。気軽に使えて近場への移動には便利です」(疋田氏)

 しかし、モペッドは決して自転車ではない。法律上の扱いはあくまでも原動機付き自転車だ。疋田氏は続ける。

「歩行者との間で事故が起きた場合は“自転車だと思っていました”と言っても通用しませんよね。ナンバープレートも付けずに原動機付き自転車扱いのモペッドを運転するということは、保険にも加入していないということ。事故を起こせば、道交法違反の乗り物に乗っている方が悪いとなりますし、乗っている側の重大な過失行為と見なされます。大きな事故を起こせば何千万円もの賠償金の支払いを命じられる可能性だってあるのです」(前同)

 気をつけなければならないのはそれだけではない。

「重大な過失行為で引き起こされた事故の賠償金は、免責対象にはなりません。つまりは、自己破産をしようが賠償責任は続くということ。違法モペッドに乗っている人は、このリスクを十分に理解して欲しい。一瞬で人生を台無しにしかねませんから」(同)

 街中を走り回るモペッド。気軽に乗れるが、間違った乗り方をすれば、一生を台無しにしかねない。

疋田智
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。