■「子どもを作る」行為だが……
セックスレスとなると子どもを作る、という行為から夫婦は離れることになるわけだが、宋医師は「セックスをすればいいというものではない」と冷静だ。
「夫婦とはいえ個人を尊重しないといけない、という風潮になってきてはいます。それでも妻にセックスを強要する夫のモラハラや、避妊をしないといった問題はある。さらには夫が妻とのセックスで妊娠を強要し、結果的に子どもを何人も出産させる“多産DV”など、セックスに関する問題はたくさんあります」(宋医師)
社会を見渡せば少子高齢化といった問題があるのも事実。現在、国会でも少子化対策の支援金制度などを盛り込んだ「子ども・子育て支援法などの改正案」に関する議論が頻繁に取り上げられている。
「もちろん子どもが増えてほしい人たちからすると、夫婦間のセックスレスが進んでいるのは由々しき事態なのかもしれません。しかし、したくないのに無理に応じてしまう人が減るほうが、健全な社会だと思います。確かに、女性が子どもを急に妊娠して、予定外のさずかりものという”おめでた”パターンは減るでしょう。その代わりに、意図しない妊娠や中絶が減りますから」(宋医師)
では、「セックスレス」が大きな夫婦間の問題につながる場合の対策や解決法はあるのだろうか。
「夫婦ごとに答えは違うものだし、話し合っていただくしかないですね。どちらかがゼロ回答だったらパートナーシップが続かない可能性もあるし、10回に1回は応じるといったルール作りによって解決する夫婦もあるかもしれない。お互いの落とし所を探すしかありません」(前同)
セックスには合意と責任が伴う。セックスレスだとしても、パートナー同士が納得していれば何の問題もないのだ。
宋美玄(そん・みひょん)
産婦人科医 医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長。1976年兵庫県神戸市生まれ、大阪大学医学部医学科卒。妊娠出産に関する数多くの著書を出版。“カリスマ産婦人科医”としてメディアへの出演、医療監修の他、女性のカラダの悩み、妊娠出産、女性の性など積極的な啓蒙活動を行なっている。2児の母。