■救急車の出動は年間309件、原因の半数ほどが観光客
公衆トイレの管理費に駐車場の警備費用で年間およそ4000万円が必要となる高野町。他にも予期せぬ出費がたびたび発生するという。
「昨年は309件、緊急搬送の要請がありました。要は、高野山滞在中にケガをしたり、体調が悪くなったという方が救急車を呼ぶわけです。この内、半数近くは観光客によるもの。その90%ほどは、外国人観光客の方でしょうか。これらの費用も町民の税金からの出費となります」(前出の高野町企画公室の担当者)
もちろん、高野山を訪れる観光客も、意図的にケガをして119番通報をしているわけではないだろう。それでも1回あたりの出動に約4万5000円がかかるともいわれる救急車。それだけに、300回超えの救急車要請は人口わずか2641人の高野町にとって大きな負担となるわけだ。
「訪れてくださる観光客の方のマナーは決して悪くありません。ポイ捨ても、たまにタバコの吸い殻が捨ててあるくらい。ただ、世界遺産への登録や、景勝地を紹介する『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で三つ星に輝いたことから、観光客の方が増え過ぎてしまった。小さな町ですから、その費用負担に耐えきれなくなってきているということです」(前同)
そこで、高野町へと訪問したり、宿泊をする観光客から”入山税”や”宿泊税”といった形で税金を徴収し、街の環境保全活動に活かそうというわけだ。
同様の試みは23年10月から、同じく世界遺産に指定されている宮島の厳島神社がある広島県廿日市市(はつかいちし)でも実施されている。廿日市市内にある宮島では来訪者を対象に、“宮島訪問税”として、1人100円を徴収している。今後、高野山がある高野町では、どのような形で“入山税”を徴収するのだろうか。
「どれだけ財源が必要か、という議論を進めたうえで、住民も観光客の方も納得できる制度を導入できればと考えております。高野町を訪れてくれる方が増えたおかげで、高野山金剛峯寺を中心に若い働き手が増えたのも事実です。より街を活性化させられればというのが、高野町としての願いです」(同)
観光客にとっても町民にとってもメリットがある制度が作られることを期待したい。