■マクドナルド1号店出店からもわかる『くら寿司』の狙い

“安さ”を売りとしたビルに乗り込むくら寿司。しかし、銀座といえば高級店が立ち並ぶ大人の街のイメージが強い。そのようなエリアに激安店がズラリと軒を連ねたところで、勝機はあるのだろうか。

「マクドナルドが日本1号店を銀座三越にオープンしたのが1971年。当時は、確かに“アメリカの聞いたこともないファミレスが銀座に?”といった見方もありました。ただ、現在マクドナルドが日本国内で大成功しているのを見るに、当時の決断は大英断。このことからもわかるように、銀座には新しい物を受け入れる土壌があるんです」(前出の岩崎氏)

 ファストフードやファストファッションと言えば安かろう、悪かろうが代名詞だった時代とは現在は一変。今や完全に市民権を得ている。それらの施設を迎え入れるだけの度量が銀座にはあるというわけだ。弊サイトは『くら寿司銀座』を訪問してみた。

 4月29日、弊サイト記者がランチ時に同店を訪れると、店の外には順番待ちの人々の行列がズラリ。外国人観光客の姿も目立つ。

『くら寿司銀座』のスタッフ曰く、

「客層は外国からの訪日観光客の方と日本人の割合が半々ほど。夜の時間になると、外国人のお客様が6割ほどですね」

 とのこと。

 自動発券機で受付番号を取り出すと「ただいま満席です」と景気の良いセリフとともに、待ち時間77分との表示があり、大盛況の様子だ。

店内の待ち時間を表示する自動発券機 撮影/編集部

 そんな『くら寿司銀座』にはある特別な仕掛けがある。客席にあるタッチパネルでは銀座店限定メニューを選ぶことができ、それを押すと店内にある屋台コーナーで職人が握った寿司や、揚げたての天ぷらセットを食べることができるのだ。

銀座店限定メニューでもある『特上にぎり蔵―KURA―』(1800円) 撮影/編集部

「インバウンド需要を見越してでしょうね。外国人に人気の寿司を載せる回転レールもくら寿司最長となる123メートル。

 価格面もやはり大きい。海外のカジュアルレストランで寿司を食べれば、10貫で39ドル(約6160円)ほどです。銀座のくら寿司ですと、他店舗より少し高い1皿150円ですが、10皿で20貫食べたところで1500円。破格の安さですよね」(前同)

 他にも訪日外国人向けの仕掛けか、店内には浮世絵風の絵画も。2つ下の階にある『GU』のフロアを見てみるとコラボTシャツも販売されている。

『くら寿司銀座』にある浮世絵風の絵画 撮影/編集部

 現地に行ってみると、柳井氏が“EDLP(エブリデー・ロープライス)”を掲げる商業ビル・マロニエゲート2が一体となり、『くら寿司銀座』を盛り上げようとしている雰囲気が感じられた。企業コンセプトに”Food Revolution”を掲げるくら寿司。銀座への出店という進化は、新たな客層を呼び寄せるか。

岩崎剛幸
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。著書に『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)
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