TikTokが2017年6月に日本でサービス提供を開始してから、およそ7年。米国ではTikTok利用者のスマートフォンを通じて情報流出が起きる危険性があるとして、禁止法案が正式可決されるなど、この中国発の動画共有アプリをめぐる問題が大きく取り沙汰されている。

 そんな中、日本でもTikTokが急成長中。月間1700万人もの利用者が親しむサービスへ成長したとも言われている。ITライターが説明する。

「NTTドコモ・モバイル社会研究所が24年4月に発表したSNS利用動向によると、10代のTikTok利用率は、20年は20%ほどだったのが、24年には半数以上となる55%にまで伸びています。Z世代を中心に利用者が大きく広がっており、前年と比較した際の利用率の伸びでは、およそ8%の利用者増加と、今も大きく成長中。日本での人気はまだまだ加速中という印象です」

 また、女性4人組グループ『新しい学校のリーダーズ』が20年に発表した『オトナブルー』は、23年に“首振りダンス”がTikTokで大ブームに。昨年末の『第74回NHK紅白歌合戦』に出場するなど人気アーティストの仲間入りを果たしたように、TikTok発のヒットや流行が続々と生まれているのだ。

 そんな時代の流れに沿ってか、ハローキティで知られるサンリオやマクドナルドなど多くの企業アカウントも誕生している。その中でも、19年からTikTokを始め、企業アカウントブームの火付け役とも言えそうな存在が、神奈川県・横浜市にあるタクシー会社の三和交通株式会社だ。還暦近いおじさんたちが全力でダンスするというギャップのある映像が話題を集め、フォロワー数は22万人以上になっている(サンリオは約15万人)。

 大ヒット曲『U.S.A』で知られるDA PUMPのミュージックビデオや、TBS系音楽特番『音楽の日2023』では、『ちゅ、多様性。』で知られる歌手のあの(年齢非公表)のダンスに参加するなど、TikTokの枠を超えた活躍も見せている。現在、若者の間でも話題になっているという三和交通は、社内のおじさん軍団を起用してのTikTok運用をなぜ始めたのか。

 三和交通の取締役部長でTikTok動画にも出演する溝口孝英さんにその疑問を弊サイトがぶつけると、そもそもは「人材獲得の狙いがあった」と話してくれた。

「“就職を考えている若い人たちの目に少しでも触れれば”というところから始めましたね。頭の片隅に残ってくれれば、転職を考えたときなんかでもホームページをのぞいてくれるかな、というくらいの感覚でした」(溝口さん)

インタビューに応じてくれた溝口孝英さん ※三和交通提供

 実際にその狙いは当たった。タクシー業界のドライバーの年齢は平均で50代半ばから60代が多いとされるが、三和交通は40代まで平均年齢が下がったという。

「若い人の入社が増えました。面接で“入社したら一緒に踊りたい”と言ってくれた人もいるそうです。グループ全体でいろんな取り組みをしているので私だけの力ではないですが、“こんなおじさんもいる面白い会社なんだよ”ということが伝わっているなら、うれしいですね」(前同)