ここにきて、クマによる被害が止まらない。そして、北海道の地で不幸な事件が起きたのは1年前――。

 絶滅危惧種であることから「幻の魚」の呼び名を持つイトウ。そんな珍しい魚が獲れるのは北海道第2の都市、旭川の北にある幌加内町(ほろかないちょう)の朱鞠内湖(しゅまりないこ)。湖を訪れた釣り人が姿を消したのは、1年ほど前となる2023年5月14日のことである。

「早朝、湖を管理するNPO法人のスタッフが舟で釣り場の岸辺まで釣り人を送り届けた。約束の時間に迎えに行ったが、釣り人が見当たらず、代わりに釣り用の“胴長靴”をくわえたヒグマを目撃。大騒ぎになったんです」(全国紙社会部記者)

 翌日、現場付近で射殺されたヒグマの胃袋から、人間のものとみられる肉片や骨片が発見された。その近くには、人の頭部や損傷が激しい胴体部分も散乱していたという。

 北の大地に衝撃を与えた“人喰いヒグマ事件”から1年。現場となった朱鞠内湖周辺では、今年5月14日に幌加内町や朱鞠内湖淡水漁協、士別署が連携し、ドローンを活用したヒグマ対策の訓練を実施。“クマ出没”の備え、厳戒態勢を敷いている。

「1年前の事件発生時、赤外線センサーを搭載したドローンを飛ばし、現場に上陸することなく、林内のヒグマを発見。猟友会のハンターが仕留めました。今年3月にはスロバキアでも、市民5人を襲ったヒグマを生体認証ドローンで追跡し、駆除に成功した例があったといいます」(前同)

 しかし、ドローンの活用には課題もあるようだ。弊サイトは、ドローンを活用してヒグマの捜索を行なう、幌加内町の有害鳥獣駆除を担う産業課の担当者に話を聞いた。

「今回の訓練は、昨年の事故を忘れないようにという意味合いもあって実施されたものです。今後、実際にドローンを飛ばす場合、まずは対象のヒグマが人に危害を加えるような“問題個体”であるかどうかを見極め、対策本部を立ち上げる必要があります」(幌加内町産業課の担当者)

 ヒグマが人の周りに出現したからといって、人を見て逃げるような個体であれば、わざわざドローンを飛ばしてまで追い払ったり、捕獲をする必要はない。そこで、ヒグマが危険であるかどうかを見極めたうえで対策本部を立ち上げて、ドローンを飛ばせる業者に依頼するというスキームを確立したそうだ。

 では、観光客などが実際に熊に遭遇した場合、どうすればいいのだろうか。

「急に逃げない。ゆっくりと後ずさる、などの注意喚起しかできませんが、それよりも山や林道、キャンプ場などに行った場合、必ずゴミを持ち帰っていただくことをお願いしています。人間の食べ物の匂いや味を覚えさせないことが重要なんです」(前同)