■クマ対策の新兵器『モンスターウルフ』も登場
これまでクマ対策には、「鈴」「撃退スプレー」「電気柵」といった原始的なものが主に使われてきたが、前出のドローン以外にも“新兵器”の開発が進んでいるそうだ。
それが、北海道の業者が開発したオオカミ型野生動物撃退装置『モンスターウルフ』だ。
「野生動物の天敵であるオオカミの形をした“電動かかし”のようなものです。首が動き、LEDの目から強烈な光を放ち、50種類以上の威嚇音を防犯ブザーと同じ音量である約90デジベルで流すことで害獣を威嚇する。“お前だけは許さない!”といった人間の声まで発することができる点もポイントです。あらゆる音を鳴らすことで、野生動物の慣れを防ぐというわけです」(害獣駆除問題に詳しいジャーナリスト)
弊サイトは、販売元である『株式会社ウルフ・カムイ』の担当者に話を聞いた。
「ドローンでヒグマを追い払う場合、夜間は飛ばせません。飛行計画を出す必要があるなど課題も多く、基本的に人がついていないとダメなんです。その点、『モンスターウルフ』は太陽光発電、バッテリー充電によって稼働するので、設置するだけで“無人”で長期間、熊対策の効果を発揮します」(『株式会社ウルフ・カムイ』の担当者)
もちろん、『モンスターウルフ』はヒグマ専用ではなく、田畑の作物を食い荒らすシカやサル、イノシシなど、あらゆる害獣を追い払うことができる。
「現在は固定式ですが、すでに“自走型”の実証実験にも取り組んでいます。自動車メーカーのスズキさんが持つ電動車いすのノウハウを活用した台車『モバイルムーバー』を開発。それに『モンスターウルフ』を搭載した『ウルフムーバー』を、昨年10月から3か月間、福井県の仁愛大学と共同で実験したところ、スイセン畑に入ったシカが驚いて2度と現れなかったケースもありました」(前同)
この実験では、設置したカメラで監視しながら、リモート操作で『ウルフムーバー』を動かしていたそうだが、将来的には完全自動運転でパトロールできる『ウルフムーバー』の開発も目指しているという。
「農業現場には、すでにGPS制御の無人トラクターなどが投入されています。現在、実験している『ウルフムーバー』はプログラムと赤外線センサーを使った動体検知を組み合わせたシステムですが、今後はGPSやAIも活用した装置を開発していくつもりです」(同)
朱鞠内湖でドローンを使った訓練が行なわれた翌日、5月15日には、秋田県鹿角市の山林で、山菜採りに出かけた60代の男性が行方不明になり、男性はその後、顔に傷がついた遺体の状態で発見された。捜索に向かった警察官2人も5月18日にはツキノワグマに襲われ、怪我をする事故も発生している。
クマ対策は今、喫緊の重要課題になってきている――。