「1億1483万円」――2023年に東京23区で売り出された新築マンションの平均価格だ。どこまでも伸びていきそうな東京のマンション価格。もはや世帯年収が2000万円を超える“パワーカップル”にしか購入できない代物では、とも言われる昨今の首都圏不動産市場。しかし、太平洋を越えた先にあるアメリカの地では、さらなる不動産価格の高騰が生じているという。
「低金利が続いている日本とは異なり、アメリカは高金利。30年固定となる住宅ローンの金利は現在7%台となっています。現地で取引される住宅の70%〜80%が中古住宅なのですが、新規で銀行から借金をしてまで住宅を買い換えようとする人は限られている。市場に物件が供給されない状況です。建築資材や人件費の上昇もあり、住まいは大幅不足。現在、アメリカ全土でホームレスが65万人以上と過去最多の状況です」(全国紙外信部記者)
この影響から賃貸物件の家賃も値上がり。今年3月に発表された数字では、アメリカ全土の平均で前年比5.7%の家賃上昇と、賃貸物件の高額化にも歯止めがかからない状況だ。一方、日本でも今年3月、日本銀行が民間銀行からの預金預け金額の一部に課していたマイナス金利を解除。金利をプラス0.1%に引き上げた。
4月23日には日本銀行の植田和男総裁が参院財政金融委員会で、金利の引き上げを示唆。GW明けとなる5月8日には「金利を早めに調整していく」と、さらに踏み込んだ発言も残した。
今後も進むと見られる日銀による金利の引き上げ。すると、住宅ローン金利も上がり、日本も米国の不動産市場を他人事では済ませられなくなるのではないだろうか。弊サイトは、日本の不動産市場の今後を『やってはいけないマンション選び』(青春出版社)などの著書がある住宅ジャーナリストの榊淳司氏に聞いた。
「日本は現在、物価が上昇しているインフレ状態。今後、日銀の植田和男総裁は金利を上げ、金融引き締めを行なうでしょう。すると当然、住宅ローンの金利も上がります」(榊氏)
一方で、経済状況に大幅な変化をもたらすことから、急激な金利引き上げは行なわれないのではないか、とも榊氏は指摘する。
「仮に住宅ローンの金利が0.25%上がったとしましょう。銀行から5000万円借りている人の金利が1%だったとして、年の利息は50万円。0.25%金利が上がったところで利息は12万5000円です。月に1万円ちょっと返済額が増えるだけ。家計を大きく圧迫する金額ではありません」(前同)
月に1万円の負担増。安い金額とは言えないが、自身の住処である住宅ローンの返済額と考えれば決して大きな負担とまでは言えないかもしれない。しかし、これから住宅ローンを利用しようとする人に与える心理的な影響は無視できないという。