■税務署が「無申告」に厳しい理由
女性講師が副業で得ていた収入は、5年間で162万円。坂本選手の遊興費2000万円と比べれば、微々たる額である。なぜ、女性は税務署からの調査対象となったのか。前出のファイナンシャルプランナー・伊藤氏によれば、税務署のスタンスは基本的に「取れるところから取る」というスタンスなので、「無申告」に厳しいという。伊藤氏は、さらにこう続ける。
「著名人や高額所得者は前提として税務調査の対象になりやすい。一般人の小さな金額を細かく指摘して税金を徴収するよりも、一個人から巨額の徴収をしたほうがインパクトがあり、世間にも“申告しないとこういうペナルティがあるよ”というアピールになるためです。また、金額にかかわらず申告の間違いを付け合わせるよりも、無申告の人のほうが手っ取り早く税金を徴収できます」(伊藤氏)
実際、ニュースとして大きく報じられるのは、著名人の多額の脱税が発覚したケースだ。たとえば2024年4月、人気漫画『薬屋のひとりごと』(SQUARE ENIX)の作画担当・ねこクラゲこと池田恵理香氏(36)が、2021年までの3年分およそ2億6000万円の所得を申告せず約4700万円を脱税したとして告発されている。
こうした実情を踏まえた上で伊藤氏は、“配信”という副業の特殊性も指摘する。
「配信は新しい収入手段の形で手軽。配信者の中には芸能事務所に所属している人以外に、一般の子どもや学生、会社員も多く、投げ銭もカジュアルにやり取りされています。
ただ、もともと確定申告をやっているようなフリーランスの人や独立・起業した人ならともかく、そうでない人は税金に関する知識が乏しく、“確定申告をしないといけない”という認識もないケースが多いのが実情です。つまり、本来申告する必要があるのに、無申告の人がかなり眠っている。税務署が目を光らせている可能性は高いと思います」(同)
手軽に副業ができる時代だからこそ、落とし穴には気をつけたい。