■“あるある”を通して自己分析し、コミュニケーションのきっかけに

 日常の“あるある”を描いたことで、SNS世代の支持を得た『うれしいすぎるよ展+そういうことじゃないんだよ展』。人気の背景には近年の“自己診断”ブームも関連しているようだ。

「韓国で大人気となった性格診断テスト『MBTI診断』は16ある性格タイプの内、自分がどれに該当するのかを教えてくれる。日本でも10~20代を中心に浸透していますが、同診断テストは、“自分は○型です”と示すことが、初対面の人との会話のきっかけにもなってくるのです」(前出の原田氏)

 同じようにコミュニケーションツールとしての役割が『いい人すぎるよ展』にもあるのだとか。

「共感や会話の糸口としての役割が、『いい人すぎるよ展』シリーズにはあるのではと。“こんなの飾ってたよ”と他の人に気軽に話したくなる魅力がある。また、取り上げられる“あるある”を通して自己分析する学生もけっこういたようです。たとえば『いい人すぎるよ展』では、自分ができていない“あるある”を見ると、“自分は『いい人』にはまだまだなんだ”と反省してしまう人も」(前同)

 この自己分析要素が、今回の『うれしいすぎるよ展』の人気をさらに高めている側面もあるようだ。

「ただ、もし『ちょっとイヤな瞬間展』のようなものがあったら、自分が当てはまる“あるある”があるかもしれないと思って学生たちは行くのが怖いそう。その点、『うれしいすぎるよ展』は自分がうれしいと感じる瞬間にフォーカスしているため、安心して見ることができるのでしょう」(同)

チケットが「関係者PASS」になっているのも面白い 撮影/編集部

 加工された非日常ではなく、誰もが共感できる日常のひとコマ。体験するだけでなくSNSでシェアすることによって価値観を共有し、ポジティブなコミュニケーションも生まれる。そんな瞬間が生まれる空間は、今後も若者の心をしっかりとつかんで離さないだろう。

原田曜平
慶應義塾大学商学部卒業後、広告業界で各種マーケティング業務を経験し、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般。 2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。主な著書に「寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生(角川新書)」「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)」など。