■テレビ業界に存在するロケ弁1000円の壁

 テレビ番組の制作現場で、自身も弁当選びに神経をすり減らしてきたという前出の鎮目氏。そんな鎮目氏が「最高のロケ弁の1つ」と絶賛するのは『第1回 日本ロケ弁大賞』で大賞に次ぐ金賞を受賞した、とんかつまい泉の『ヒレかつサンド』(453円)だ。

「サンドイッチですので、ポケットに入れて持ち運べる。かつ、忙しくても食べやすい。僕も幾度となく注文をさせていただきました」(鎮目氏)

 また現在、テレビ業界を襲う視聴率不振も、まい泉人気に拍車をかけているようだ。

「テレビ業界も視聴率が下がり、現在では番組予算も右肩下がりに。番組にもよりますが、1000円の壁というのがロケ弁には存在します。ロケ弁に1000円超えの予算を出してくれる番組は限られる。そうなると、手頃で購入しやすいお弁当の人気が高まるというわけです」(前同)

 ロケ弁に割く予算が高くなるのは、どのような番組になるのだろうか。

「ドラマですね。撮影時間が長いですから、1日に2〜3回ロケ弁を食べることも珍しくない。そうなると現場の士気を上げるためにもロケ弁に割く予算も高くなりがちです。こういった現場では、番組の視聴率が良ければ、すき焼きで知られる今半の高級弁当が出ることもありますね」(同)

浅草今半の牛肉重(1728円)はテレビ局でも大人気 撮影/編集部

 一方で、なかにはスタッフ泣かせの困ったタレントさんもいるそうだ。

「さる大物タレントの方はロケ弁へのこだわりはありませんでしたが、控え室にフルーツ盛りがないと怒っていましたね。他にも大物司会者の方の中には、高級お魚弁当にしか箸をつけないという人も。お店に注文を断られることも多かったのですが、スタッフが拝み倒して毎回1つだけ死守していました」(同)

 たかが弁当、されど弁当。テレビ番組の裏側には、ロケ弁当にまつわるいくつものドラマがあるようだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)